野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

MTRと東西

香港での滞在4週目で、野村誠「點心組曲」の14のプロジェクトが、いよいよ始動しております。今朝は、第4楽章の「MTR Remix」に取り組みます。これは、前回、アートコースの卒業生たちと音楽セッションをした際に、カヤンが次々にMTR(地下鉄)の駅名を言っていったことから思いついたプロジェクトです。

ぼくが行くと、リサが非常に反応して、一緒に即興でキーボードを弾くセッションになりました。リサは、かなり音楽に反応がよいのです。しかし、ぼくが前回カヤンの言葉に基づいてつくった電車の駅名を歌いだすと、すぐにカヤンが反応。一緒に歌いだす。そして、次々に、色々な駅名を入れた節が生まれてきて、それを唱え続けるアンサンブル。

ある程度やった後に、多重録音を開始。今回、多重録音をするつもりは全く想定していなかったのですが、香港の地下鉄は、MTR(=Mass Transit Railway)と言います。しかし、MTRと言われると、Multi Track Recording(=多重録音)の略と思うのが、音楽家MTRの駅名をMTRで多重録音しよう、ということで、カヤンの声を多重録音。最初のうちは駅名を唱えていたカヤン。途中から、いつの間にかテレビ番組名を唱え始める。

その後、ぼくは部屋で、この音源を少しだけ編集をして、i-dArtのメンバーに聞かせて後、ランチ。

第5楽章の「Adagio for Quiet Quintet」は、今日は都合により休みなので、1時間休憩できて、第6楽章の「Sonatina for Sumo Hearing」をやる。これは、ソナタ形式では、第1主題、第2主題と二つのテーマが出てくるが、ここでは、東と西と呼んでいて、東チーム15人、西チーム15人と分けてのセッション。前回は、30人一斉にだったので、二つのグループにしてもらった。東チーム15人と、「トントンストン」という相撲の太鼓のリズムを起点に、太鼓を中心とした即興セッションを30分して、その後、メンバー交代し、西チーム15人と、ベルとダンスによる即興セッションを30分した。呼び上げの歌声を起点にやってみた。

非常に良いリズム感で、東にも西にも参加し、渋い演奏を色々展開した人が、実は、難聴でほとんど聞こえないらしいことを、後で知らされる。普段、何の活動にも参加しない無気力と見られる人は、ぼくには指揮者のように見えた。鋭いアイコンタクトと、演奏を触発する手の動き。

明日は、主に、昨日と今日やった人たちとの週2度目のセッションになる日で、明日初回なのは、第8楽章「Music for Yellow Bamboo」のみ。ということで、明日に向けて、倉庫の片隅に眠っていたアンクルンを消毒/クリーニングする。

ベリーニと打ち合わせ、「點心組曲」のコンセプトの話など。久しぶりに、ベリーニと夕食。いろいろ話せてよかった。