野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

夢と現実の狭間の巨人

Kyoto Art Hostel Kumagusukuにて、山本麻紀子展を開催中。本日は、山本麻紀子の眠りと巨人を巡るパフォーマンス。睡眠文化研究所の方がトークに来られたり、ふとん祭りの方々の提供のふとんが山盛り敷き詰めてあって、ふとんに寝転びながら、話を聞く。ゴロゴロする、ということ。

ふとんが敷き詰められた空間自体が、視覚的にも面白いのだが、要するに、これは、夢と現実の境目を旅するための装置なのです。演劇というのは、舞台という仕掛けで、フィクションの世界を描いてみせたりするわけですが、これは違う。ふとんに入って、横になり、覚醒している脳みそを寝かしにかかる。現実と夢の境目くらいに行って、その境界線辺りに行った上で、巨人について語ったりしよう、という企画なのです。

トークがいつ始まったのかも曖昧で、いつ終わったかも曖昧で、そして、ゴロゴロ寝転がっていると、結局、途中で寝てしまったりもして、肝心な話を全部は聞けていない。でも、そういうものなのです。現実と夢の狭間を旅するのです。

その後、やぶくみこさんのグンデル(ジャワ・ガムランの楽器)の音色で眠くなり、野村は鍵盤ハーモニカを吹き、山本麻紀子さんがふとんに入って、物語を語り続ける。ぼくも、せっかくなので、ふとんに入って、横になって演奏。やぶさんは、起きて演奏されていますが、音色が大変眠気を誘う音。ぼくは、横になっているけれども、鍵盤ハーモニカの音色が、どうにも眠りに誘われる音色ではない。そこで、鍵盤ハーモニカもふとんの中に入れてしまい、ふとんの中で演奏。ふとんに音が吸収されて、いい感じに遠くから聞こえてくる音色になる。存在が、少し夢に近づく。

1時間近くパフォーマンスする間に、何人もの人の寝息やいびきも聞こえてくる。夢と現実の狭間を旅していたのは確かで、山本麻紀子がやろうとしていることは、こういうことなのか、とおぼろげに体感できた気がする。

家に戻り、「かずえつこと 即興のための50のエテュード」no.16「なちゅらる」を作曲。昨日と似た手法で作曲。