野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ラジオ出演で「ピアノの本音」を語る

朝は、ラジオ出演(KBS京都)の「妹尾和夫のパラダイスKyoto」に、調律師の上野泰永さんと野村誠で出演しました。生放送で30分間、じっくりピアノに関する話をさせていただきました。番組の内容を要約すると、以下の通りです。

上野泰永さんは、常識を覆す調律師で、「ピアノを浮かしてしまおう」という試みもする人です。トライアングルも、紐でぶら下げて、できるだけ振動を止めないようにします。トライアングルを床に置いて鳴らしても、いい音はしません。同様に考えると、ピアノは床に置いては、いい音がしない。そこで、上野さんは、ピアノを床から浮くようにするためのスティムフューチャーを考案し、ピアノを浮いた状態にするインシュレーターを開発してしまったわけです。

さて、ピアノを浮かせてみると、普通100聞こえる音が、130聞こえるくらい色々な音が聞こえてくる。これは、革命的な出来事でした。それまで聞こえなかった鍵盤のカタカタ言う音、ハンマーの動く音など、様々な音が聞こえるようになると、ピアノの音が、本当に些細な動きで、もの凄く変化するようになったのです。ピアノに対する発想が、根底から変わる体験でした。

そうした上野さんとの出会いは、20年以上前、ぼくが学生の頃です。ピアノの実験をするために、自費で滋賀県の守山に、ピアノのためのホールを作ってしまったのです。

さてさて、オーケストラから鍵盤ハーモニカまで、様々な活動をする野村誠の実演を、ということで、鍵盤ハーモニカを演奏しました(「鍵盤ハーモニカイントロダクション」少々+「サザエさん」)。「ミュージシャンと言うよりパフォーマーやなぁ!これは、子どもさんも食いつきますよね。幅広いですねえ」と妹尾さん。鍵盤ハーモニカでも、様々な奏法で色々な音が出るように、ピアノでも色々な奏法があるわけです。上野さんはピアノの内部の機構をご存知なので、調律師の視点から思いつく数々の奏法を提案してくれます。場合によっては、ピアノの欠陥かもしれない点まで含めて、ピアノの可能性を提案してくれます。

昨年、釜ヶ崎で映画音楽のレコーディングをする時に、上野さんは、野村が相手なので、一度調律した音に敢えて音を狂わせた調律をして、野村にぶつけてきました。「こうした提案に応えてくれるのは野村くんだけ」と上野さん。調律師と作曲家として、20年以上の付き合いで、信頼関係をつくってきました。

ということで、今年、上野泰永さんと野村誠で、新プロジェクト「ピアノの本音」を開始することにしたのです。4月29日には、ピアノと鍵盤ハーモニカとチェンバロを聞き比べるコンサート。6月5日は、調律師の提案するピアノ奏法にフォーカスをあてたコンサート。8月6日には、160年前の楽器プレイエルも登場。会場は、上野さんがピアノの理想の空間として作ったスティマーザール(滋賀県守山市)で、最高級のピアノ(ベーゼンドルファーのインペリアル)を、野村が演奏します。いずれも14:30開演。「チケット安いですねー。前売2,000円ですよ。遠いけど。でも、駅からは徒歩5分です。」と妹尾さん。チケットのお問い合わせは、077−583−8411です。

最後に、CD「ノムラノピアノ」(とんつーレコード)から「弦」の一部を抜粋で聞いていただきました。「リスナーの皆さん、いかがでしょうか?さっきまで喋ってはった野村さんとは違う世界。別人のよう。柔らかい音で凄いですね。」このCDも、上野さんのこだわりのホール(スティマーザール)でレコーディングしたものです。

http://tontuurecord.thebase.in/items/2770301

ということで、ラジオ出演の後、上野さんと4月29日の「ピアノの本音」第1回の打ち合わせをして後、大阪へ。「世界のしょうない音楽祭」と「世界のしょうない音楽ワークショップ」の打ち合わせ。昨年度を踏まえて、さらに「世界の」の部分を巡り、国際交流協会とも連携をはかっての新展開も計画中。

夜は、京都に戻り、山本麻紀子「だいだらぼうとホリバーン」活動報告会に参加。色々、良いお話がいっぱいできました。濃密な一日でした。