野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

移動する音・配置される音

ながらの座・座でのコンサートを聴きに行く。クラリネットの吉田誠さんのソロ「移動する音・配置される音」。同じ誠という名前なので、それだけで共感してしまう。

障子をとりはずし、庭を背景に演奏。壁がない上に、畳。西洋建築のような残響がない。残響でのお化粧ができないすっぴんの音色でのバッハから始まり、その後、メシアンの「時の終わりのための四重奏曲」の3楽章の「鳥たちの深淵」。この曲を庭の橋の上で演奏。三井寺の鐘が途中で鳴り、カトリックメシアンが仏教と融合する。クラリネットが、いつしか尺八に見えてくる。素晴らしい演奏だった。ブーレーズの「ドメーヌ」を庭の6カ所で演奏。ライヒの「ニューヨーク・カウンターポイント」は多重録音のスピーカーとの共演バージョン。ここまでが、20世紀以前の傑作で、最後の2曲が21世紀に作られた現代音楽で、藤倉大の作品と、ヨルク・ヴィトマンの作品。クラリネットの重音奏法や、様々な特殊奏法も織り交ぜた熱演。所謂、西洋建築的な残響ではないので、これらの作品の休符が、日本的な緊張感の間になっていく。尺八とクラリネットの二重奏を書いてみたい気がした。クラリネット一本で、見事なリサイタルで、庭の空間とのコラボレートも素晴らしかったし、さらには、曲間のトークで作曲家の魅力について分かりやすく解説する姿勢も素晴らしかった。

帰って、明日からのフィリピン遠征に向けて、準備。1997年のホセ・マセダ来日の時のガムランコンサートの映像などを見て、いろいろ懐かしく思い出す。