野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

楽器職人四重奏

タイから来日のアナン・ナルコンと半年ぶりの再会。無事、来てくれて嬉しい。

東京藝大の上野キャンパスにて、院生の松澤佑沙さん(箏)、学部生の上遠野文音さん(箏)、リンズィ・ドゥガンさん(尺八)とリハーサル。そして、アナンとの即興セッション。リンズィさん、松澤さんは、昨年11月にも、メメットとの即興演奏を体験しているのですが、上遠野さんは、本日初めてお会いしました.芸大には即興演奏の授業があるらしく、邦楽科の学生でその授業を通して出席するのは大変珍しいらしく、上遠野さんは、その授業に通して出席していたそうです。

その後、アナンがタイの曲を演奏してくれたり、彼の新作の四重奏の説明をしてくれたりしました。この四重奏が素晴らしい作品。通常は、楽器の四重奏ですが、この四重奏は楽器職人の四重奏です。4種類の楽器職人の工房に行って、楽器をつくる行程を映像化しています。木琴を作る行程では、木琴が木琴になる以前の音が、笛を作る行程では、笛が笛になる以前の音がします。こうした映像を、会場の四方にプロジェクションして、4方向からの映像(音)を楽しむ作品です。様々なノイズ/リズム/環境音が重なり合いますが、13分経つと、それぞれの楽器で同じ曲がユニゾンで奏される。アナンは言います。素晴らしい奏者は、拍手をもらうけれども、素晴らしい楽器職人があってこそ、音楽は成立する。楽器職人に拍手する機会を作りたかったと。

夜は、アナンのレクチャー。タイの音楽と言うけれど、国家などというのは、西洋諸国が植民地化した名残で生まれた国境によるものだ。我々は米食う民族、国なんていう概念で、差別化したくない。タイ人も日本人もご飯を主食にする民族だ。と始まり、色々な話に進みました。最後には、先生の話は長くて詰まらないから、話はやめて演奏しよう。ぼく一人じゃ寂しいから、手を叩いたり楽器を鳴らして、手伝ってくれ、と言ってセッションが始まりました。

いよいよ日曜日が本番です。
http://aaa-senju.com/5117