野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

北口大輔チェロリサイタル大盛況でした

北口大輔チェロリサイタル、満員御礼。本当にチケット完売で、おそらく当日券も出なかったのではないか、と思う状況で、空席もなく、まずは、これだけチケットを買って来て下さったお客様方と販売/広報を頑張ってくれたホールの方々に感謝を申し上げます。所謂、有名な曲がプログラムにあるわけではなく、バッハ、プーランク、即興、野村誠という時代を超えるプログラムで、これだけ集客できたのは、今後の企画にとっても大きな追い風になります。ありがとうございます。

そして、北口大輔さんの情熱溢れる演奏は、本当に素晴らしかった。ぼくも前半は、観客として楽しみ、後半は、出演者として北口ワールドをしっかり味あわせていただきました。前半であれだけクラシックを弾いた後に、後半の一曲目で即興をするというのは、凄いことだと思うのですが、ある意味、バッハもベートーヴェンも即興の名手だったわけですし、即興音楽という別ジャンルをするつもりはなく、バッハやプーランクと同じジャンルの音楽の即興をしているつもりで、チェロとピアノの音色を楽しみました。途中で、席替えが起こったりしたのは、即興ならではでした。北口くんの世界の広さの一端を観客の方々にも楽しんでもらえたのでは、と思います。

そして、最後のチェロ協奏曲では、日本センチュリー交響楽団の小川和代さん(ヴァイオリン)、森亜紀子さん(ヴィオラ)、村田和幸さん(コントラバス)、近藤孝司さん(トロンボーン)、三窪毅(トロンボーン)が加わっての演奏でした。これが、皆さんの演奏が、もの凄く気持ちが籠っている音で、一緒に演奏していて、嬉しいというか、こちらもその気持ちに呼応するように演奏しておりました。皆さん、凄い情熱のある方々で、その情熱を楽器にのせることのできる方々なのです。そして、この曲を演奏している人たちにとって、この曲は他人事ではなく、みなそれぞれが、当事者として、自分の音楽として演奏していたことが印象的です。聞いている方々にとっても、他人事ではなく、それぞれの方の声を代弁している音楽として響いてくれたら嬉しいなあ、とも終演後にいろいろ語り合いながら思いました。The Workのワークショップに参加したメンバーも、作曲家が新作初演に立ち合うような形で立ち合っていただきました。彼ら/彼女らがいなかったら、彼ら/彼女らと過ごした時間がなかったら、この音楽は存在していません。出会いと過ごした時間に感謝です。

過密スケジュールで、普段は、演奏会やワークショップの後に、すぐに解散するオーケストラの方々ですが、今日は、打ち上げでも、熱く熱く語り合うこともできたことも嬉しいことでした。そして、演奏者からも、また機会をつくって再演したい、との声もいっぱいいただきました。演奏した人々がこんなに喜んでくれたことも、ぼくとしては、本当に嬉しいことです。3年半前に日本センチュリー交響楽団のコミュニティ・プログラム・ディレクターに就任した時は、このオーケストラの中に、知り合いが皆無でした(ぼくを招聘した事務局の柿塚拓真さんと、首席チェロ奏者の北口大輔さんの二人のみ)。今は、野村とワークショップを経験した楽団員は15名にもなり、事務局の方々からも、レクチャー、コンサート、取材など違った関わりでも声がかかるようになり、3年間で着実に信頼関係が築けてきたと思います。何より、ぼく自身が、センチュリー響の一員という自覚が生まれ、外部からのお客さんではなく、皆さんのお仲間に入れてもらった、という意識になって参りました。だから、今回も、チェロ協奏曲のバックのオケの一員としてピアノも弾けました。

これから、センチュリー響と、ますます、色々な試みを続けていきたいと思っています。北口くんとも、また何かやりたい。これからも、皆さん、どうぞ応援よろしくお願いいたします。