野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

チェロ協奏曲のリハーサル

豊中市立文化芸術センター小ホールでのリハーサル。明日は、北口大輔さんのチェロリサイタル。野村の新曲が世界初演なのです。チケットは完売。

野村の新曲チェロ協奏曲「ミワモキホアプポグンカマネ」は、全4楽章。編成は、チェロ独奏+6人(ヴァイオリン、ヴィオラコントラバストロンボーン2、ピアノ)です。小ホールの舞台は、この7人の奏者でいっぱいになります。舞台上の配置は、ステージの上手に金管楽器トロンボーン2)、下手に弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ)が対称的にいて、中央前にチェロがいます。中央の後ろに、コントラバス、そしてピアノがいるという形になりました。空間的にも良い配置になれて、曲が立体的に聞こえてきます。

ホールも良い響きのあるホールで、200席ですが、傾斜があるので、最後列でも遠い感じはせず、音がよく届きます。室内楽には絶好な場所です。

リハーサルには、この曲の創作プロセスに関わったThe Workワークショップ参加者たちが見学に来ていました。また、スタッフの0歳児の息子さん+そのお母さんが最後列から見学をしていました。本番は見られないので、ということですが、かなりの英才教育です。

それにしても、北口大輔くんとこのような形で再会するとは、思っておりませんでした。彼が東京で大学院生だった頃か、大学院生を終わって間もない頃に、作曲家の伊左治直くんのライブで、素晴らしいチェロを弾いていたのが北口くんでした。そして、チェロが凄くうまい上に、ライブの途中で、突然、近鉄バッファローズの帽子をかぶって、近鉄を応援するトークをしたり、ルパン3世のテーマをチェロ独奏でアレンジして弾いていたりする柔軟性も持っているのです。その後、片岡祐介さんのマリンバリサイタルに客演し、野村作品を片岡氏と共演してくれました。この時には、野村は都合がつかず聴きに行けなかったのですが、その時に、野村の「てぬき」という曲に感激し、「これを色々なところに広めたい」と言ってくれたと伝えきいております。

そんな北口くんとご無沙汰しているうちに、彼は九州交響楽団の首席チェロ奏者になり、さらに日本センチュリー交響楽団の首席チェロ奏者になり、あの溢れる才能のまま大活躍をされていたのですが、野村も偶然、日本センチュリー交響楽団とコミュニティ・プログラムをすることになり、再会。オーケストラの中でも北口くんは、演奏技術と読譜能力と音楽センスと人柄といい非の打ち所のない大スターであり、皆が彼の音楽を愛していて、彼のことを愛していて、尊敬していることが伝わってきます。また、彼も、周りの人々に常に愛と敬意を持って接していることも伝わってきます。ということで、リハーサルの場が、非常に的確で密度の濃い練習でありながら、アットホームに進んでいく。理想的な現場です。

ぼくは、これまでは作曲者として、スコアを見ながら他のパートのことも指示しながらの練習だったのですが、今日は本番を想定して、ピアノのパート譜で演奏しました。今まで見ていた音符よりも遥かに大きい音符で、ああ、あの小さい音符も読めていたから、まだあんまり老眼じゃないなぁ、と思ったりしました。

それにしても、日本センチュリー交響楽団の方々は、ちょっとの指示で、どんどん演奏のニュアンスを変えて、ぱっと適応できるし、ああ、オーケストラで働くというのは、この柔軟性が凄いなぁ、と一緒に練習していて勉強になることばかりです。

明日は、北口くんと野村による即興演奏も行われます。即興の練習は一切しておりません。1部でバッハとプーランクを満喫した後、2部では、即興と野村の新作です。

チェロ:北口大輔
トロンボーン:近藤孝司、三窪毅
ヴァイオリン:小川和代
ヴィオラ:森亜紀子
コントラバス:村田和幸
ピアノ:野村誠