野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

オーケストラがひびく

本日は、「世界のしょうない音楽ワークショップ」の本年度5回目でした。これは、もともと豊中市に拠点を持つオーケストラ日本センチュリー交響楽団が、豊中市と始めたコミュニティ音楽プロジェクトです。豊中市の庄内という地域を音楽で活性化することが、最初の構想にありました。地域で活動するNPOのしょうないREKの協力を得て、2014年度に開始。

 

1年目は、センチュリー響から4名のプロの音楽家(ヴァイオリン、ヴィオラトロンボーンバストロンボーン)が参加し、15名ほどのワークショップ参加者と、簡単な打楽器や個人の持っている楽器で、野村の「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第2稿)」を演奏しました。合計で20名ほどのアンサンブルで、まだオーケストラをやっている感覚はありませんでした。

 

2年目は、さらに大阪音大の協力を得て、箏、三味線、尺八という邦楽器をお借りすることができることになりました。センチュリー響からも、ヴァイオリン、ヴィオラトロンボーンなどを借りることができ、西洋楽器も日本の楽器も加わるアンサンブルになりました。やはり、センチュリー響から4名のプロの音楽家(ヴァイオリン、ヴィオラトロンボーン2)が参加し、大阪音大の先生方も数名参加し、ワークショップの参加者も30名ほどで、合計40名を超えるアンサンブルで、野村の新曲「世界の庄内、みんな兄弟」を演奏し、オーケストラ的なサウンドが少し感じられました。

 

3年目は、大阪音大から、邦楽器だけでなく、インドのシタールインドネシアガムランという民族楽器もお借りすることができるようになりました。西洋楽器も含めて、日本、アジア、西洋が混在するワークショップになりました。また、「故郷」というテーマを設定し、邦楽の地歌越後獅子」を少し盛り込みました。センチュリー響から6名のプロの音楽家(ヴァイオリン2、ヴィオラコントラバスクラリネットトロンボーン)が参加し、大阪音大の先生方も増え、ワークショップの参加者は40名を超え、合計50名を超えるワールド・ミュージック・オーケストラになり、野村の新曲「世界のしょうない2017 想家」を演奏しました。

 

4年目は、大阪音大から、邦楽器、民族楽器だけでなく、古楽器ヴィオラ・ダ・ガンバもお借りすることができることになりました。そして、前年の「越後獅子」を発展させて、センチュリー響から5名のプロの音楽家(ヴァイオリン2、コントラバスクラリネットトロンボーン)が参加し、ワークショップ参加者も50名ほどで、合計70名近い人数で、野村の30分にも及ぶ新曲「越後獅子コンチェルト」を演奏しました。

 

という過去の4年間を踏まえて、今年も、邦楽器、民族楽器、古楽器、西洋楽器、が混在する40名ほどのワークショップをしていますが、今年は例年に比べて、子どもの参加者が増えています。センチュリー響からは、4名のプロの音楽家(ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ)が参加し、ワークショップ参加者全員が、初めて触る楽器を演奏します。今年の野村の新曲は、「青少年のためのバリバリ管弦楽入門」をいう曲で、15分ほどの音楽ですが、これは、聴く人にとっても、演奏する人にとっても、オーケストラとはどういう体験か、ということを、体感できる、実感できるものを目指して、作曲しました。

 

オーケストラって何だろう?と改めて考え直して、そして、作曲したのです。尺八や箏やシタールや、いろんな楽器がある。でも、オーケストラって、シンフォニーって、そうした音が混ざり合って、響き合っていく体験で、シタールにしても、三味線にしても、ヴァイオリンにしても、ヴィオラ・ダ・ガンバにしても、弦楽器。このワークショップ、弦楽器が圧倒的い多いオーケストラなんです。弦楽器は、弦が響き合えば、お互いに鳴る。共鳴し合うんです。それが、日本の楽器だろうが、西洋の楽器だろうが、インドの楽器だろうが、昔の楽器だろうが、文化とか国境とかっていうより、響き合う。とにかく、響き合う体験をしたかった。

 

で、楽器が一番鳴るのは、開放弦だったりするのです。その結果、とにかく、とにかく、楽器を美しく鳴らすこと、響かせること、そこにフォーカスした音楽をしたかった。そうして作曲した「青少年のためのバリバリ管弦楽入門」、本日は、皆さんの楽しい猛練習の成果もあって、どんどん、響き合うようになってきた。オーケストラが鳴り始めるとは、こういう感じなのです。最初は、ごちゃごちゃと色んな音があって、ぐちゃっと聞こえる。でも、お互いの響きが合うと、急にすっきりして、風通しがよくなったり、澄んだ響きで、すっきりしてくる。そういうことが、2時間のワークショップの中で、起こっていたのが、確かな手応え。

 

40人の初心者が、箏や三味線や尺八やシタールやヴァイオリンやヴィオラやチェロやヴィオラ・ダ・ガンバや打楽器を演奏。たとえ、そこに10名ほどのプロの音楽家がいたとしても、15分の楽曲がこんな風に演奏できていることは、奇跡と言ってもいいのだけれども、でも、それが、徐々に目の前で実現されていく。ああ、オーケストラだなぁ、と確かに思ったのです。

 

皆さん、本当に本当に、ありがとう。おつかれさま。本番は、2月9日「世界のしょうない音楽祭」(@ローズ文化ホール)です。

 

www.toyonaka-hall.jp