野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

かんじる学校

本日は、相模原市文化財団の企画「かんじる学校」(@女子美術大学)で、講師をしました。午前中が、低学年1−3年生の17人。一人英語のネイティブの子どもがいて、英語と日本語を混ぜてのワークショップ。即興で音を出していると、「長い、疲れた」という子どもがいたので、「じゃあ、短いのやろう」と5秒の曲、続いて10秒の曲、そして、11秒の曲をやった。11秒の曲は「イレブン」という曲になり、指揮者が指で11カウントする。この指揮者役を色々交代でやっていくうちに、指揮者が二人になり、6人になる。指揮者のユニゾンが面白い。その後、今日は特別、美術館で音を出す許可ももらっているので、美術館に行く。この空間がよく響くことに気づいた子どもがいて、「よく、ひびくね」、声を出してみよう、とみんなで声を出す。絵を見て、演奏もしてみた。暗い中の光を使ったインスタレーションもあり、暗い中でも音を出す。そして、最後は外に出て、芝生の上でみんなでピクニック気分になり、「しばふのうえになにがいる?」という歌を作って演奏した。カスタネットの音に、亀の甲羅を感じる子ども達の感性は、凄いなぁ。ちょっと叩き方変えたくらいでは、それほど違った音色に聞こえないなどと思っていてはいけない。そして、「イレブン」を17人全員が指揮者になって、野村が独奏するという斬新な演奏もしてみた。指揮者が一人でオーケストラが多数なのが普通なのに、指揮者が大勢で演奏者が一人って、子どもの発想は面白過ぎる。ワークショップの最後に、これでもう会えないかも、という時の切なそうな子どもたちの表情。こちらは、一期一会に慣れちゃっているのかもしれないけれども、濃密な二時間を過ごして、一気に親しくなって、これでもう会えないなんて、確かにそうです。

午後は、高学年(4−6年)11名。4年生が10人と6年生一人。高学年は、いきなり知的。曲をつくるにも、既存の音楽の知識が豊富。まずは、知っている曲を歌ってくれる。その中のリズムを取り出して、曲にするというサンプリング的な発想。「ダンダンダカダカダン」ができる。2曲目は、「アルルの女」のフレーズを活かして「みんなの行進」ができる。3曲目は、各自が別々に何かの曲のリズムを引用して重ね合わせる曲で、全員一緒にやると、グチャグチャになるのでは、と懸念する声もあがって、少しずつ重ねていくと、四季のように4つの場面ができ「春夏秋冬」という曲になる。その後、美術館に移動し、巨大な絵画を「これって芸術なの?落書きなんじゃない?」などと言ったりしながら、「火山」の噴火を表現した曲をつくり、続いて、別の絵画から「台風」をイメージした激しい曲をやり、暗い部屋でのインスタレーションで、静けさの音楽を試み、最後に、外に出て、芝生の坂を滑り転がり、おおはしゃぎ。ぼくもやるように薦められ、一緒になって転がり、

のはらで すーべる
のはらで ころーがる
のはらで こーろぶ
のはらで ピクニック

という歌を即席で作って歌い、みんなで転がる。豊かに時間でした。「かんじる学校」が終わり、芝生まみれになった野村を、スタッフが養生テープでペタペタやってくれる。最後の振り返りの時間も終わり、ああ、もう帰らなくっちゃいけないんだ、と思うのだけれども、「かんじる学校」で感じたことは、みんなそれぞれ家に持ち帰って、長い時間をかけて熟成されて、明日につながっていくんだ、だから終わったわけじゃないんだ。でも、帰るのは寂しいし、もっと続きたいな、そんな余韻を感じながら、新横浜駅から新幹線で観光客のいっぱいいる京都駅に戻り、夜遅くに自宅に帰り着く。ああ、みんなありがとう。みんな元気で幸せに。