野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

世界のしょうない音楽祭

日本センチュリー交響楽団のコミュニティ・プログラム・ディレクターになって3年。この3年間で36回のワークショップをやりました。また、コミュニティ・プログラムとしては、今回が6回目のコンサート、そして庄内では3回目のコンサートです。日本センチュリー交響楽団からは、今回は7名の演奏家が参加して下さっています。

昨年に引き続き、大阪音大からは、音楽学の井口淳子先生、邦楽の菊武厚詞先生が参加して下さり、さらに今年は、バリガムランの小林江美先生、シタールの田中峰彦先生も参加。ワークショップの参加者も、正確な数は記憶していませんが、一年目は20名ほどだったのが、昨年は30名ほどで、今年は40名以上となり、本当にオーケストラの様相を呈してきています。しかも、邦楽器も、西洋楽器も、管弦楽になっておりまして、さらに、通常複数で演奏しないシタールが5名いるとか、あり得ないオーケストラになっております。

本日のゲネプロの演奏を経て、本番で、「せーの1234」と「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第6稿)想家」を、このオーケストラで演奏しました。オーケストラのプロの演奏家がすぐ横で本気で演奏している中に混じって演奏する体験というのは、本当に貴重なことなのだ、と参加者の方々の感想を聞いて、今更ながらなるほどを思ったり、今更ながら、小学生から「野村先生、ヴィオラって何ですか?」と質問されて、あれ、それを説明していなかったっけ、と思ったり。オーケストラのメンバーから、「邦楽って、本当に凄いですね」と邦楽再発見の声を聞いたり、邦楽の演奏家の方々から、地歌を演奏しているのに、ああやって洋楽の楽器が入ってくるのが、新鮮で楽しかった/嬉しかった、という声が聞けたり。曲の途中で泣いてしまった、という声などもありました。今年度でさえ、参加者申し込みは、応募初日で定員いっぱいになったのですが、来年度も参加したいとの声を多数聞きました。来年度は、定員を40名から増やす何らかの方法/新たなアプローチを考えないといけないです。

打ち上げ会場にあったピアノを、子どもたちが弾いて、耳コピで、「日本センチュリー交響楽団のテーマ」のピアノ伴奏を弾いたり、「越後獅子」の手事の中に出てくるフレーズを弾いたり。それも、何度も何度も。そうやって気に入っていただけるのは何よりです。ワークショップの後半は、密度の濃い練習だったので、ようやく子どもたちと喋ったり交流している感じの時間にもなりました。センチュリー響の近藤さんの手品に、子どもたちが大喜びしたり。仲良くなったところでお別れですが、みんなまた会おうね。

ワークショップに参加した方々、短い時間で、かなり無茶なプログラムですが、本当によく着いて来てくれました。ありがとうございます。こうして音楽の場を共有できたこと、大きな喜びです。また、ご一緒しましょうね。

3年前に、最初に日本センチュリー交響楽団を訪ねた時、演奏家の方々からも事務局の方々からも、警戒されていたと思います。それはそのはずで、そもそも、大阪府知事だった橋下徹氏から、様々な理屈により「要らない」と言われた経験のあるオーケストラです。野村が現れたとしたら、まずは、橋下氏と同じように、オーケストラを否定する言動を言う人種がやって来たのではないか、と無意識に警戒することでしょう。ぼくは橋下さんではないので、「オーケストラは変わらなければいけない」などと言う気は、毛頭ありませんでした。正直言って、「皆さんは、素晴らしい音楽集団です。何も変わらなくていい。そのままで素晴らしい」と思ったし、そんなに素晴らしいんだから、一緒に色々な体験ができたら、嬉しいな、と思ったのです。3年経って、今は、演奏家の方々からも、事務局の方々からも、信頼していただき、演奏会や新プロジェクトなどで、野村の曲をやりたい、と言っていただけるようになりました。また、一人一人と密に関係を持てることで、オーケストラって、こんなに個性豊かな音楽家がいて、こんなに様々なキャラクターの人がいるのだ、と思うようになりました。次に、ぼくがプロのオーケストラの作品を書く時は、オーケストラのプレイヤー一人一人の顔を思い浮かべながら書くのだろう、と思います。そういう関係を少しずつ育んでいけるのは、本当に嬉しいことです。

それにしても、日本の古典の地歌越後獅子」の上に、クラシック音楽の古典のハイドンのメロディーや、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディーをのせて、ハーモニーをつけて曲を書くことが許されて、それを、このように笑顔で演奏して下さる方々がいて、これから、もっともっと、庄内との仕事をしたいし、オーケストラの仕事したいし、邦楽の仕事がしたいし、民族音楽の仕事がしたいし、子どもたちとの仕事がしたい、と思いました。それらに、作曲家として関わりたい、と思いました。

そして、今回、井口先生が、テーマを設定したい、テーマは「Home」にしたいと言われた。世界各地の人が故郷を懐かしむ、という意味で、「ホーム」というキーワードが出て、中国人の王さんがホームシックになった時の「想家」という言葉からメロディーを作ったりもしました。こうやって打ち上げをやっていて、ふと、日本センチュリー交響楽団にとって、豊中/庄内は、ホームなのだ、と思いました。願わくは、ぼくの書く曲が、皆さんのホームになれるような、そんな作曲家でありたい、と思ったのです。でも、ぼくは、旅人だからなぁ。でも、また庄内に帰って来ますよーー。待ってて下さいねーー。

2014年度 


(1)The Work (若者の就労支援×音楽プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第1稿)」、「ハローライフ協奏曲」の2曲を大阪駅前で世界初演
(センチュリー響より6名:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、トロンボーン2)



(2)哲学カフェオーケストラ庄内(音楽創作プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第2稿)」を世界初演、「手拍子のロンド」も上演@サンパティオホール
(センチュリー響より4名:ヴァイオリン、ヴィオラトロンボーン2)




2015年度



(3)The Work (若者の就労支援×音楽プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第3稿)」、「ハローライフ協奏曲2」を世界初演@センチュリーオーケストラハウス
(センチュリー響より6名:ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、トロンボーン2)




(4)世界のしょうない音楽祭(音楽創作プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第4稿) 世界の庄内 みんな兄弟」、「新世界」を世界初演@サンパティオホール
(センチュリー響より5名:ヴァイオリン2、ヴィオラトロンボーン2)



2016年度



(5)The Work (若者の就労支援×音楽プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第5稿)Overture for Geo-opera」、「Geology」を世界初演ローズ文化ホール
(センチュリー響より6名:ヴァイオリン2、ヴィオラコントラバストロンボーン2)




(6)世界のしょうない音楽祭(音楽創作プロジェクト)

ワークショップ6回
「日本センチュリー交響楽団のテーマ(第6稿)想家」を世界初演、「せーの1234」も上演@サンパティオホール
(センチュリー響より7名:ヴァイオリン3、ヴィオラコントラバスクラリネットトロンボーン