野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

シンガポール1日目

シンガポール、朝9時半にホテルのロビーで待ち合わせ。香港のアーティストで障害者と活動するベリーニと会う。そして、CCD SYMPOSIUMの主催であるシンガポールのアーティストのフェリシアが来て、笑顔で握手。インドの古典舞踊家トランスジェンダーの人とダンス活動をするアシウィニ、インドネシアのバンドンからエイズやドラッグ中毒の人々への取り組みをするアーティストのヴィンセント、オーストラリアで刑務所などで演劇を展開するジェームス、イタリアで難民とパフォーマンスをつくるアンドレアとイチェンと登場。フェリシアの案内で近所をテクテクと歩く。さすがに赤道、真夏の京都と比べても、日差しが強く紫外線も強い体感。雑多な飲食店が混在するフードコート的なコーヒーショップと呼ばれるところで、朝食。中華な店も、インド系の店も、マレー系の店もある。ぼくはカレーっぽいものを朝食に。

インドネシアのヴィンセントにインドネシアでは、どこに行ったことがあるか、と聞かれて、ジョグジャ、バンドゥン、ジャティワンギ、と言ったら、「ジャティワンギ!」と凄く反応。インドネシアの瓦でアートプロジェクトをするジャティワンギとヴィンセントも関わりが深いらしく、すっかりジャティワンギの話題で盛り上がる。

22年前に、イギリスのヨークに住んでいた時に、ヨーク大学大学院で建築を学んでいたレンタロー君がシンガポールにいることが判明し、電話で連絡がつき、夜に会うことに。20年ぶりに再会は楽しみだ。

少し時間があったので、海岸まで歩いて行き、ベンチに腰掛け海を見て、ぼーっとする。

その後、Goodman Arts Centreにて、打ち合わせ。午前中の外国からのメンバーに加えて、シンガポールのアーティストも加わる。高齢者と演劇をするジューン、パーカッションでコミュニティミュージックを展開するサイドゥ、精神病の人との活動をするシャイラ、視覚障害の人とプロジェクトを展開する美術家のアレシア、HIVの問題に取り組む身体運動のアーティストのミンの5人が加わる。一日目は、それぞれのプレゼンテーションで、2日目は、複数のアーティストでワークショップを運営する。ぼくは、パーカッションのSyedとペアを組むことになった。

ミーティング終了後、レンタロー君と再会する。20年の月日が流れて、大聖堂とレンガの町並みのヨークではなく、高層ビルや近代建築がテーマパークのように並ぶシンガポールでの再会だったが、20年の月日が嘘のように、シンガポールの経済や社会や建築について語り、レンタロー君の案内で現代建築を見学し、巨大なカジノを見た。前大阪市長は大阪をシンガポールみたいな都市にするのが理想だったのだろう、と思った。そして、経済を優先しているシンガポールという国が、建国からたった50年で失った文化や産業の代償について思いを馳せた。