野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

瓦の音楽とSlamet A. Sjukur

「瓦の音楽」のリハーサル。西洋音楽の作曲家ギギーは、「瓦の音楽」と淡路島での体験をまとめて、間もなくインドネシアの出版社Art Music Todayから上梓する。打楽器奏者/作曲家のやぶさんは、京都で2年前に始めたガムラングループで、子どもたちと作った曲を、曲集として本にしたいと目論む。ぼくは、ギギーの本の日本語訳にカップリングするように、インドネシアでの「瓦の音楽」に関する物語を書き下ろして、淡路島アートセンターから新しい本を作りたい、と思うようになった。そんな3人が、ゴデアン(ジョグジャ近郊)の瓦だけで、演奏する。プリペアドピアノのような倍音を豊富に含んだ音色。日本の瓦で例えれば、万十掛瓦の古瓦のような音色だ。どんな音色か興味がある人は、是非、「瓦の音楽」のCDをご購入下さい。火の車会計のNPO淡路島アートセンターは、4月からスタッフ人件費が捻出できずに、スタッフがゼロになります。CDを購入していただくことやCDを宣伝していただくことは、「瓦の音楽」を今後も継続していくための大きな支援になります。

ギギー、やぶ、野村のトリオで、ゴデアンの瓦。味わい深い曲。ウェリーが少し遅れて到着する。では、ジャティワンギの瓦を演奏しよう。ジャティワンギでもらった焼く前に、瓦をバー状にカットして作った鍵盤型の瓦。これは、木琴に近い音色がして、音程も聞き取りやすい。A,B,C#,E,F#,Aというペンタトニックな音階をウェリーが見つけて、演奏する。これと合う音階は、淡路島に戻れば、色々見つかるだろうが、今の手持ちにはないので、太鼓的なアプローチで、ウェリーの伴奏をするやぶさんとギギー。ぼくは、鍵ハモで伴奏。この曲も、違ったテイストに。

天才作曲家のスボウォさんに入ってもらっての5重奏。スボウォさんが「ゴデアンの瓦、ジャティワンギの瓦と来たから、次は日本の瓦だ」と言う。日本の瓦を5人で演奏する。スボウォさんは、ダンスの音楽をする達人でもあり、コンテンポラリーダンスにとって欠かせない人物でもある。だから、この曲には、佐久間さんのソロダンスをつけていただくことに。ゆっくりと始まる舞踊が、非常に美しい。

ちょっと一息、休憩。お茶とスイカとお菓子。突然、滝のような雨が降り始める。隣の家の屋根の瓦の上を、猛烈な勢いで雨が流れていく。その様子を撮影する上田くん。横になって雨の音に耳を傾けるギギー。

スタッフの亨くん、千住のコヒヤマさん、イハラさん、撮影の上田くんまでもが加わっての全員での瓦セッションの後、瓦をパッキングして、荷作り。本番の会場のTembi Rumah Budayaへ移動だ。

ギギーが昨年79歳で他界した作曲家Slamet Abdul Sjukurの曲集を買ってきてくれる。ピアノ曲ガムラン曲、合唱など、代表作が6曲ほど入った曲集。

会場に移動の後、瓦を運び込み、会場セッティング。楽器の配置を決定し、打ち合わせの後、リハーサル。ガンサデワのメンバーも加わって全員で瓦を演奏するシーンは、強烈。

練習終了後、Slamet Abdul Sjukurの1961年作曲のピアノ曲を弾いてみる。ぼくが生まれる前、スラマットが25〜26歳の作品。彼が、ウェリーやギギーくらいの年齢の時に、こんな美しい曲を書いていたのか、と驚き、スラマットの不在を残念に思う。

いよいよ明日が、「瓦の音楽」コンサート、インドネシア公演。