野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

スティマー・ザールでピアノ研究中

本日は、スティマー・ザール(=調律師の上野泰永さんがピアノの理想の空間として1988年に作ったホール)に行きました。

http://www.stimmersaal.com/#block03

上野さんと開始した新プロジェクト「ピアノの本音」の第1回が、4月29日に開催なのです。

ということで、午前中から、スティマーザールへ。上野さんは、チェンバロを準備して待ち構えておられます。チェンバロの仕組みに関する資料をプリントしておられ、さらには、スタインウェイの歴史などの本も準備。そして、ピアノの内部機構が分かる模型も。いきなり、チェンバロの中をあけて、部品を取り外して、説明が始まる。ここから、ピアノの内部の模型を使って、ピアノの仕組みについての解説が始まります。ピアノの鍵盤を押し始めてから、鍵盤の重さがどのように変化していくのか、仕組みを見ながら、確認していきます。アップライトピアノの模型もあるので、そちらの説明も。分かっているようで、疑問だった点を、ここぞとばかりに質問、また質問。それに上野さんは、嬉々としてお答え下さります。話は、ピアノの棚板の話。鍵盤の微妙なコントロールにより、ダンパーやハンマーの位置がどう変化するか。弦の振動の仕組み。ピアノのそれぞれの脚に、どれくらいの重さがかかっているか。内部のフレームの形状について。ダンパーの形状について。ソスティナートペダルの通常とは違う裏技的使い方。鍵盤の重さを変える方法。実際の調律の話。叩き方での音程の変化、などなど、3時間ほどノンストップで続き、ノートを20ページもとることに。

ここで、ようやく昼食休憩。その後、上野さんが1980年頃に、ウィーンのベーゼンドルファー社の工場で1年研修していた時のお話を伺いました。ウィーンの楽器博物館で上野さんが19世紀やそれ以前のピアノの内部構造をスケッチした膨大なノートも見せていただきました。これが、非常に細かいのです。そして、調律に関する本なども、色々見せて下さるので、2冊お借りすることにして、もうこれ以上お話を聞くのはぼくの脳みその許容量を超えているので、ここまでにして、楽器の演奏をしました。

チェンバロを1時間以上練習させていただき、チェンバロでの即興演奏を研究。その後、160年前のピアノ(プレイエル)を弾かせていただき、そして、最後に、スティマー・ザールの目玉でもあるベーゼンドルファーのインペリアルという(通常88鍵盤)97鍵盤あるピアノを弾かせていただきました。

このピアノが本当に、素晴らしいピアノなのですが、それを上野さんが考える理想のピアノに近づけるべく上野さんの調整が入った特別なピアノなので、本当に凄い音がするのですが、慣れなければ扱いが難しいピアノです。このピアノを4時間近く、弾き込ませていただきましたが、こんなピアノは世界のどこでも弾いたことがない。とんでもないピアノです。

上野さんのリクエストでクラシックの曲を何か弾いてほしい、と言います。クラシックの響きを味わえるような曲を、より味わうように演奏してみましたが、これが、またまた難しいのですが、このピアノで弾くと、別の音楽に感じられて、驚愕です。

約9時間の滞在を終えて、4月29日のコンサートに向けて、多くの宿題を抱えて帰宅。いやぁ、やり甲斐ありますが、濃い一日でした。

ピアノの本音  トーク&コンサート 第1回

4月29日(祝)
開場 14:00
開演 14:30
@スティマーザール(滋賀県守山市勝部5−2−62)
http://www.stimmersaal.com
前売 2,000円
当日 2,500円
3回通し券 5,000円
ピアノ/トーク野村誠
調律/トーク:上野泰永

野村誠のピアノソロコンサート。ピアノの究極の音色を求める調律師の上野泰永さんとの共同研究で見つけた様々なピアノの音色と技巧を盛り込んだコンサート。そうした裏話も盛り込みながら進めます。第1回は、ベーゼンドルファー社製の97鍵のインペリアルという巨大なピアノの演奏に加えて、チェンバロ、鍵盤ハーモニカも演奏する予定。会場のスティマーザールは、上野さんがピアノの実験のために作った個人ホール。ピアノの理想の音空間を探求するために設計したとのことです。CD「ノムラノピアノ」のレコーディングも、ここで行いました。これだけ大きなピアノを至近距離で楽しめるのも、醍醐味です。(第2回は、6月5日、第3回は、8月6日を予定しています。)