野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ピアノの本音

ついに、「ピアノの本音」(@ Stimmer Saal)。

 

「十和田十景」の10曲を世界初演。十和田での体験を知らない観客たちが、タイトルと音楽だけで、十和田を旅する。そんなツアーに音楽で連れて行くのも、面白い体験だった。また、やってみたい。

 

上野さんのピアノに関する考えを、ぼくなりに噛み砕いて、お客さんに説明できた手応えを感じれたことは、自分としては大きなこと。

 

ピアノというのは、数百キロの体重を抱える巨大な楽器。結局、この巨大な重量感のために、すごい音が出るし、この巨大な重量感のために、歪みも出る。その歪みは、音の歪みにもつながる。重量感が必要になるのは、硬質な金属弦を数多く強く張っているからだ。この金属弦が硬いから、音が伸び続ける。だから、お箏みたいに自然に音が減衰して消えるのにまかせることはできない。それぞれの弦に、フェルトのダンパーで消音する。甚だ、ややこしい楽器だ。

 

この甚だややこしいピアノという楽器は、仕組みが複雑すぎるので、鍵盤やペダルで操作していることと、実際に楽器から音が、どう関係しているのか、実際に楽器を操作しているピアニストですら、わかっていないことが多い。

 

そのピアノの仕組みを解明し、それによって、ピアノの魅力をどれだけ最大限に引き出せるかを実演付きで説明した。

 

そして、インドネシアの作曲家Gardika Gigih Pradiptaの新曲は、本当にスティマーザールのピアノのために作曲された音楽だった。本番のあの空間で弾いたら、説得力を持つ音楽だった。他の機会に他の場所で演奏しても成立しないかもしれない。上野さんの調律で、野村が演奏する状況で成立する音楽。こんな音楽を作曲してくれたギギーに感謝。

 

そして、コンサートの最後に、ギギーと即興で連弾をした。いろんな世界を体験して、最後の最後に、インドネシアに辿り着いて終わった。

 

東京から駆けつけた映画監督、金沢から駆けつけた調律師など、このイベントを目掛けて遠方から来てくださった方々の熱い思いにも感謝。そして、ピアノに関して、もっともっと自分なりに深めていけるなぁ、と実感できた。本当に、ようやくピアノ音楽の入り口に立てたかもしれないと思った。新しいピアノ音楽をどんどん作曲していこうと思った。そして、ぼくのピアノは、ぼくの鍵盤ハーモニカとも、常に連動しているし、作曲や他の活動とも連動している。そんなことも、再確認できた。

 

ギギーを連れて、家に帰り、ギギーと語り合う夜。彼も、間もなくインドネシアに帰国。