野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

西成にfenceはないと猫は言う

明後日3月11日のHAPSでの「相撲の太鼓のリズムから」という講座に向けて、本日、一番太鼓と寄せ太鼓のリズムを復習して、自分なりの譜面を作成。色々な面白い発見があります。

午後は、大阪のenocoで開催中の草本利枝写真展「西成にfenceはないと猫は言う」を見に行く。最初の風景写真は、ぼくも見知っているはずの西成の風景だったりするのですが、色づかいが鮮やかで、幾何学的な線が空間を切り抜いていき、猫の目も凄いが、草本さんの目で見る西成は、本当に他の誰もが見ていて見ていない世界が溢れていて、それは真に力強く美しい。それは、西成であるということを無効にして、ただ、そこにある世界と日常を力強くぼくらに提示する。その後、数多くの人物写真には、それぞれの人物に付随する物語もあり、物語を参照しながら、観客が自分なりのストーリーを被せて写真を眺めていく。そうした物語としての写真が一面に広がっているように、世界には複数の物語が隣接し並走しているのだ。そして、西成の作家たちが作ったオブジェ、そして、西成の作家たちが撮った昔の写真と、休憩スペース。草本さんの時間。猫の時間。そして、偶然に別府出身の写真家とその母親に出会い、enocoは西成を経由して別府にワープしていく。

http://breakerproject.net/archives/000216.php

気がつくと、ぼくは地下鉄、京阪、近鉄と電車を乗り換え、電車内で相撲の太鼓のリズムを色々アレンジして、なんだかモーツァルトみたいなリズムだ、と驚き、一人で興奮。雨の中、京都の東寺の近くを歩いていた。20年以上前にお世話になったギャラリーが、今は美容室になっているのを横目に、そのギャラリーに出入りしている当時から遊んでいた友人の中村未来子が出展している2人展を見に行く。古い民家を改装して、自宅兼ギャラリースペースにしていて、展示されている物たちが生活空間から解離することなく、一緒にそこで息をしている。それは日常のような非日常のような、現実のような非現実のような。そして、20年以上前と現在を行き来しながら、気がつくと、その場にいる人々が皆、未来の話、自分の人生の終わり方の話をした。ぼくは、おじいさんになって、未だ世界にいない若い人と友達になってお喋りをしているのが夢だと言った。長く生きれば、多くの人が来世に旅立つのを見送らねばならない悲しみもある。けれども、そうやって先に逝ってしまう人々を偲び生きていれば、故人は生まれ変わって、現世で再会できるかもしれない。うちの祖母にも、さくら苑の樋上さんにも、ホセ・マセダにも、再会できるかもしれないな。そう思うと、希望を持って素敵なおじいさんを目指したい、というのが夢だと思えた素晴らしき展覧会でした。

http://kawai-arisa.jp/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E5%AD%90x%E5%B7%9D%E4%BA%95%E6%9C%89%E7%B4%97/

帰宅後、やぶさんから鳥取でのコンサートに提案があり、リハーサル。ヴァイオリンと鍵ハモで、2009年の門限ズのイギリスツアーで、モアカムで即興的に生まれた曲を再演!

相撲の太鼓を研究して後、就寝。