野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

土砂降りの後の川辺のダンス

今朝は、生憎の土砂降りだったが、意を決して鴨川で撮影。川に着くとあっという間に小降りになり、しばらくすると奇跡的に雨があがる。疫病の収束を待つのは、雨宿りに似ている。雨足が強くなるのか弱くなるのか読めない中、雨宿りをするのか、それとも雨の中、傘をさして出かけるのか。土砂降りの中、無理して出かける必要はなく、10分、20分遅れて出発すれば大丈夫なこともある。今日は、土砂降りの中、意を決して外に出たが、運良く雨があがった。コロナの感染も、雨があがるように収束して欲しい。そして、いつまでコロナの雨宿りをし、いつ意を決して行動するのか、その判断も問われていると思う。

 

濁流の川の流れを背後に、美しいダンスを繰り広げる砂連尾さんと佐久間さん。オンラインでは会っていたものの生身の砂連尾さんにお会いするのも久しぶりな上に、生身の砂連尾さんが踊っているのを見るのも本当に久しぶりで、生きている存在しているということを体感できる幸せな時間。佐久間さんは、川の中に入り濡れまくりのダンス。風景と溶け合う踊り。驚り。雄ドリ。川辺の鷺とダンサーは時に同じように動く。撮影の草本さんには、強力なアシスタントのO氏も同行。草本さんはダンサーよりも目立ちまくる黄色のレインコートで、ダンサーに近接する攻める撮影で、草本さんの姿もパフォーマーのようだ。野村が作曲中の新曲は弔いの音楽だが、それが弔いのダンスとなり、映像となっていく。こうした無茶ぶりプロジェクトへの背中を押してくれたのが、文化庁の継続支援とコーディネーターの里村さん。感謝。ぼくは、その場で演奏するわけでもないのだが、演奏の波動を伝えるべく、心の中で演奏しながら、演奏を伝えるダンス=指揮をしていた。聞こえない音楽は、ダンサーたちに伝わっただろうか。

 

今日の次なるイベントは、PCR検査。検査の病院に行くため、市バスに乗ると、そこには作家のいしいしんじさんがいた。いしいさんと半年ぶりに再会。2月に、いしいさんと城崎で過ごした時間があり、来週からの城崎レジデンスが始まるから、そのためにPCR検査を受ける。コロナの事情がなかったら、いしいさんも城崎にお誘いしたかった。そんな事情を、いしいさんに報告をし、報告し終わると、骨董屋に源氏物語のことで用事があって、と謎の言葉を残して、いしいさんは行った。偶然だけど必然だなぁ。そのままバスに乗っていき、PCR検査を受ける。

 

PCR検査は、病院の中に一切入らずに受ける。病院に着く直前に電話をすると、唾液採取の容器が病院の入り口の外に用意してある。そこで容器を受け取ると、保険証をガラス越しに写真にとられる。外のテントの中に入り(車で来る人は車内で可能)、そこで、ひたすら唾液を容器に入れる。十分に唾液を集めたら、病院に電話すると、防護服でフェイスシールド付きの院長さんが受け取りに来る。不思議な体験だった。明日には検査結果が出る。

 

Kyotographyの草本さんの写真展を見に行く。東日本大震災後に宮城県の女川の仮設住宅暮らしの5歳の少年と運命的に出会った写真家が、10年近くに渡り、交流したドキュメンタリー写真展。写真展でありインスタレーションでもあるが、それは、小説や映画の世界に放り込まれたような体験でもあった。少年の見せる様々な表情、津波の傷跡を残しつつ美しい色彩を放つ景色。ここで、いしいしんじさんが「その場小説」を読んだら、どんな小説になるのだろう?ここで、砂連尾さんが踊ったら、少年とどんな対話が見えるだろう?

 

小学校の教室を使って、草本さんの写真展以外にも、数々の展示があり、せっかくなので、そうした展示を足早に見ていたら、突然、やっちゃんが現れた。毎日、「四股1000」では顔を合わせているけれども、今日は、撮影のため「四股1000」を急にお休みにした。なのに、こうしてバッタリ出会う。

 

今日の最後は、シアターE9での公演。コンテンポラリーダンスの増田美佳さんが、韓国舞踊、ジャワ舞踊、日本舞踊の舞踊家と作った公演で、文化庁の継続支援の助成によるもの。文化庁の継続支援があって、増田さんが、韓国舞踊やジャワ舞踊や日本舞踊に触れる機会を得て、しかも、その体験を我々観客に開いた。こうした交流/学び/実験の場を公演という形で公開したことは、とてもいい。韓国舞踊の音楽が、フラメンコと同じで、123、456、78、910、1112という拍の取り方で、フラメンコはカスタネットを鳴らしながら踊るが、韓国舞踊が太鼓を鳴らしながら踊る。なんだか、全然違うのに、韓国舞踊はフラメンコのようだ、と思った。そのうち、太鼓のリズムが、トントンストンと相撲の太鼓のように聞こえてきて、ぼくは、客席で相撲の太鼓のリズムを手拍子していた。フラメンコと韓国舞踊と相撲太鼓の共演はありかもしれないと思った。

 

一方、日本舞踊は、パントマイムのようで、扇を駆使して、見えないものが見えるようになってくる。イウィンさんの舞踊は、ジャワ舞踊から自由に羽ばたいていく。4人が地面を踏み鳴らす。ここに相撲の四股があってもいいかもなぁ。

 

受付で体温の計測。自由席だが、誰がどの席に座ったかを紙に書いて提出。でも、前後左右に間隔をあけるディスタンス客席ではなく、通常の席。上演中もマスクを着用するようにとのアナウンスがあり、公演中ずっとマスク着用。会場内の換気がどうなっていたのかは、公演中に特に意識しなかった。

 

こんな1日を過ごしながら、新曲が熟成されているはずだ。明日、目覚めたら、譜面をもう一度、見直したい。同じ譜面から全く違う風景が見えてくるかもしれない。

 

帰宅後、大相撲の動画などをチェック。大相撲の今場所も大詰め。目が離せない。