野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

吉森信との2台ピアノ

本日、吉森信野村誠の2台ピアノ@両国門天ホール、でした。

次回があるのかどうか?あるとしてもいつかは、超未定です。長時間のリハーサルも含めて、吉森信の音楽を思う存分に満喫しました。

野村作品の「ケロリン唱による即興曲」、「古代民謡」、「おっぺけぺーの種を蒔け」、「日本センチュリー交響楽団のテーマ」の演奏が、コンサートの前半。いずれも2台ピアノ。トーク込みで、約50分。

後半は、吉森の新作「光り輝くもの」1曲。アドリブの要素も大きく、リハーサルではアドリブ部分は軽く流してしまうので、本番になって初めて、実際にどんな音楽なのか、体験することができました。音楽というものは、ある種、異界と交信する作業でもあったりするわけですが、この異界というのは、異界のように思っていて、他ならぬ自分の内部の奥底であったりもします。

そうしたことが、演奏中に強く感覚的に意識されて、演奏していて、目をつぶり異界との境界を越えていきたくなり、しかし、新作の譜面から目を離すわけにもいかず、でも、時々、目をつぶっては、危うく次の譜面の音を見逃す間際に、目を開けて、現世に戻って弾き、また目をつぶり奥深くを探索し、また次の瞬間に目を開く、ということを、高速で反復する非常に珍しい音楽体験をしました。

後半はトーク込みで40分なので、1曲で30分強やっていたのでしょう。アンコールには、野村の新作「マコトとマコト」を演奏。これも、即興の要素が多いので、本番にどう響くのか、本番まで分からなかったのですが、あの大作のあとに、現世に着地するための必要な1曲になることができました。

吉森信という優れた音楽家と、こうして音を通して深く対話をすることができたことは、自分にとって、本当に大きな体験でした。ありがとう。ご来場いただいた方々も、この何が起こるか分からない初の場にお立ち会いいただき、本当にありがとうございました。