野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

オーケストラの未来

野村にとっては、オーケストラが、大きなテーマになっています。3年前、2014年3月に、大阪のプロのオーケストラ「日本センチュリー交響楽団」のコミュニティ・プログラム・ディレクターに就任して以来、オーケストラとの仕事を続けております。で、最初は、不審がられるものです。1996年にガムランの作曲をした時、2001年に女子大の先生に就任した時、1999年に高齢者施設でワークショップした時など、最初は、みんな野村が何者なのか不思議がり戸惑いました。今回も、野村を招聘した一人の熱心なマネージャーの意欲と熱意と行動力で実現したものの、最初は、やはり不審がられたと思います。3年かけて、徐々に、オーケストラの楽団員や事務局との信頼関係が構築されていき、現在は、そうした信頼関係を築いた上での次の段階に入ったと感じています。

この3年間は、コミュニティ・プログラムと呼ばれる市民参加型ワークショップの活動を行ってきたのですが、こうした種まきから、確実に芽が出てきていることを実感しています。当初、56名いる楽団員のうちの6名の参加でスタートしたのですが、3年経った今では、このプログラムを経験した楽団員が倍の12名にまで増えました。また、今年に入って、「ハイドン大學」の講師として、ハイドン交響曲についてレクチャーする機会をいただき、これが好評で、また、7月25日に「ハイドン大學」の講師として登場することにもなりました。まさか、ハイドンに関するレクチャーをすることがあるとは、夢にも思わなかったのですが、しかも2度も、、。でも、実際に講座を準備すると、ハイドンから学べる面白い題材がいっぱいあるのです。クラシック音楽の知識ゼロで楽しめる音楽の本質に迫る講座を目指しております。その情報がこちら。

http://www.century-orchestra.jp/topics/%E3%80%902017%E5%B9%B47%E6%9C%8825%E6%97%A5%E7%81%AB1900%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%E5%A4%A7%E5%AD%B8%E3%80%91/


そして、野村誠作曲作品を演奏会で取り上げようという動きも出てきております。楽団の定期演奏会で野村作品が演奏される機会も近く実現する予定です。それに先駆けて、今年の8月23日には、日本センチュリー交響楽団首席チェロ奏者の北口大輔さんのリサイタルで、野村の新作のチェロ協奏曲「ミワモキホアプポグンカマネ」が、演奏されることになりました。北口大輔さん(チェロ)、小川和代さん(ヴァイオリン)、森亜紀子さん(ヴィオラ)、村田和幸さん(コントラバス)、近藤孝司さん(トロンボーン)、三窪毅さん(トロンボーン)という6名の日本センチュリー交響楽団のメンバーに、野村誠のピアノが加わった7人なウルトラセブンなメンバーで演奏されるのです。北口さんは、以前、東京に住んでおられた頃に、作曲家の伊左治直さんとのライブで何度かご一緒したことがあり、片岡祐介さんのリサイタルで、野村作品を何曲も演奏していただきましたが、今は、日本センチュリー交響楽団の首席チェロ奏者なのです。彼は、本当に巧いし、音楽性も非常に豊かで広いので、リサイタルは超お薦めなのです。プーランク、バッハ、野村の作品に加えて、北口大輔+野村誠による即興演奏も予定しております。今後、こうした試みが継続していくために、是非、是非、皆様、ご来場下さり、応援していただけると嬉しいです。観客動員が少ないと、日本センチュリー交響楽団が、少しずつ新しい道を開拓しようとしていることへのブレーキになってしまう可能性がありますし、逆に観客動員が多いと、こうした試みをさらに展開し続けることが容易になります。ということで、応援するつもりで、是非、是非ご来場よろしくお願いいたします。

http://www.toyonaka-hall.jp/event/event-1451/

また、今年の8月には、ファミリーオーケストラのワークショップも計画中で、こちらには、センチュリー響のメンバーと野村誠以外に、キーボーディストの鈴木潤さんにも加わっていただく予定ですし、冬にはマンチェスター・カメラータとのコラボレートで、高齢者プログラム。さらに、3月に野村がイギリスでどっぷりコラボレートしたボーンマス交響楽団とヒュー・ナンキヴェルとは、来年度以降に新企画を実現させるべく、計画中です。豊中市主催で、大阪音大の先生方と日本センチュリー交響楽団、しょうないREKで続けている「世界のしょうない音楽祭」を、上海で実施できないか、という話も浮上してきています。

というわけで、オーケストラは18ー19世紀のヨーロッパで発展した過去の外国のものなのか、それとも21世紀の日本でのオーケストラは存在可能なのか、という問いに、真っ向から真剣に取り組んでいるつもりです。野村がこれから目指すオーケストラは、18世紀のオーケストラや19世紀のオーケストラを否定するものではないですが、そうしたものを踏まえた上で、しかし違った形態のオーケストラに発展するかもしれません。そこには、ガムランが入るかもしれないし、三味線が加わるかもしれないし、エレクトロニクスが入るかもしれない。プロだけでなく、アマチュアの参加や観客の参加もあるかもしれない。認知症の高齢者が共演するかもしれないし、落語が入るかもしれないし、相撲が加わるかもしれない。「日本センチュリー交響楽団」という名称は、そうした21世紀の日本でのオーケストラを実現するというミッションを表しているかのように思いますし、その可能性を追求するためのスタート地点に、ようやくぼくらは立ったような気がします。

というわけで、最近は、毎朝、ハイドン交響曲のスコアを読むのが日課になっています。でも、ハイドンのスコアを読んでいて、そこから21世紀の自分の活動との繋がりを見つけていく作業は、大変面白い活動だと思う訳です。そういう意味でも、現在、日本センチュリー交響楽団が行っている定期演奏会でのハイドンラソンの中に、21世紀の音楽がどうやって参加していくことができるのか、そうしたことも、今後議論されていくことになるでしょう。

とオーケストラについて、日々考えております。皆さんの忌憚ないお考えもお聞かせいただければ幸いです。


本日は、ロンドンのエンリコ・ベルテッリ、名古屋の牛島安希子さんとスカイプで会議をしまして、9月13日に名古屋で、面白いコンサートをしようと思っております。詳細は追って発表しますが、お楽しみにして下さい。