野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

地味なことを丁寧に

本日が、「The Work」の本番。午前中、90分、若者達とリハーサル。お揃いの白いポロシャツになり、チームワークが素晴らしい。「ハローライフ協奏曲」の未確定な部分が、短時間の中で随分発展しました。一人一人が積極的に意見を言うし、初回のワークショップと比べて随分打ち解けたし、音楽との距離感が随分変わったと思う。その後、90分、日本センチュリー交響楽団のメンバーも加わってのリハーサル。センチュリー響の演奏家達は、昨日も定期演奏会だったはずで、多忙なスケジュールなのに、決して音楽に対する情熱を失っていないのが、素晴らしい。短時間のリハーサルで、帳尻合わせをするだけでなく、少しでも演奏を良くするための努力を怠らない。頭が下がります。こうした姿勢に触れられることは、このワークショップで一番大きなことかもしれない。

大阪駅に移動して、会場でサウンドチェック。弦楽四重奏トロンボーンバストロンボーン、キーボード、カホン、タンバリン、鉄琴、鍵盤ハーモニカ、オカリナ、カズー、スライドホイッスル、ホース、アナラポス、クラベス、ギロ、といった編成を、半野外の空間で様々なノイズの中で聞き取れるようにPAする音響さんも大変ですが、良い仕事をしていただき感謝。リハーサルをしているだけで、立ち止まって聞いて行くお客さんが何人もいる。子どもがずっと聞いていた。

本番前、立ち見の観客に紛れて立って様子を見る。ブレーカープロジェクトの雨森さんや、高槻現代劇場の青木さん、ながらの座・座の橋本さん、ヴァイオリニストのそこあそこさん、大阪市大の高岡さん、阪大コミュニケーションデザインセンターの西川さん、千島財団の北村さん、東京都文化発信プロジェクトから吉田さんなどのお顔を拝見。読売新聞の記者さん、大阪日々新聞の記者さんなどもいらっしゃる。それほど宣伝していないのに、臭いを嗅ぎつけて来る人々、素晴らしい。無料のイベントで宣伝し過ぎて、立ち見の人が通路を封鎖して通行妨害になってもいけないのだろう。でも、もっともっと多くの人に届けたいなぁ、とも思う。まずは、本日立ち合って下さった方々に感謝。

たった2曲の本番でした。1曲目が野村誠作曲「日本センチュリー交響楽団のテーマ」で、13分ほどの作品。アップテンポで、リズムもメロディーも輪郭がはっきりしている曲なので、半野外の路上コンサートでも、伝わりやすい強度があったと思う。2曲目は、5分程度の「ハローライフ協奏曲」で、こちらは非常に繊細な作品なので、半野外の環境では、ノイズに埋もれそうで、微妙な響きを味わうのは大変だったと思う。それでも、観客達が集中して聴いてくれたこと、出演者達が集中力を途切れずに演奏し切ったことは、本日の大きな収穫だったと思う。

大阪の町中でやったイベントではあるが、ド派手なイベントではない。仮装するわけでもない。度肝を抜くような派手なパフォーマンスでもない。有名な曲を演奏するわけでもない。ある意味、地味に、丁寧に、芯が通った音楽を、提示できたことを、嬉しく思う。この地味なことを、丁寧に続けていくことのは、結構骨が折れる。それを、応援してくれる観客が必要だなぁ。応援してくれる社会が必要だなぁ。でも、安易に目先の効果だけ求めずに、地味なことを一歩ずつ丁寧にやっていきたい、と強く思った。応援よろしくお願いします。