野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アナンとの再会

バンコクの2日目。朝、民族音楽学者のアナンが訪ねてくる。2009年にオーストリアで会って以来だから、4年ぶりだ。バンコクで会うのは、2007年以来なので、6年ぶり。タイの民族楽器を自由自在に演奏し、カンボジアミャンマーなど、東南アジアの各地の音楽にも造詣が深い。大学で教えるだけでなく、映画音楽の作曲をしたり、ラジオ番組のパーソナリティーをしていたり、タイの伝統楽器の実験的なアンサンブル「コーファイ」もやっている。そして、ユーモアのセンスに溢れ、誰とでも仲良くなる人柄。

今後のスケジュールを相談しようと、アナン。そもそも、アナンの予定はどうなのか、と聞くと、つい先日、北京から帰ってきたところで、7月11〜15日は、シベリアに行くらしい。7月25〜26日は、タイ南部のソンクラーに講義に行くとのこと。で、手帳を見ながら、アナンが毎日の自分の予定と照らしながら、ぼくのスケジュールを提案してくる。こんな具合だ。

明日20日はチュラ大のセミナーに参加して、その後ガリーと会場の下見。21日は、ガリーとのメディテーションセッションで演奏。22日は、シルパコーン大学でアナンの授業。23日に、古琴のワークショップがある。24日は、ホアヒンに行って面白い演出家がいて、その人の学校でワークショップをしたり交流するのはどうか。25日は、シルパコーン大学でアナンの授業。26日〜27日にソンクラー(タイ南部のマレーシア国境の近くの古い街)に講義に行くので、一緒に行って何かしないか。伝統的な影絵もあるし、色々古い文化を体験できる。28日は、ラナート(木琴)のコンペティションがあるから、それを見よう。29日と30日は、タイ文化センターで、コーファイ(アナンのタイ楽器の楽団)が、タイの演歌と共演するコンサートをする。7月1日〜3日は、あいてるから、チェンマイに行くかい。いろいろ、紹介できるよ。4日が、JDの作曲の授業で、、、、、といった具合に、毎日用事が入ってしまう。休む間もない。しかも、その場で、アナンはどんどん電話をして、ブッキングしていく。「ホアヒンのワークショップは、24日の月曜日に決まったから」。「ソンクラーに行く飛行機の予約するために、パスポート番号が必要らしい。」どうやら、電話の向こう側の人物は、既に飛行機の手配まで始めている。

昼ご飯を食べに行こうというので、近くで食べるのかと思うと、「鍵ハモを持った?」と念を押される。「この後、戻って来ないの?」、「うん、そのまま移動する可能性が高いからね」。

ランチを食べて通りがかりのタクシーを止めて、そのまま飛び乗ると、延々走る。タクシーの初乗りは35バーツ。昼に食べた麺は40バーツだった。妻によると、タクシーの初乗りと麺の値段は、似ているとのこと。確かに、日本のタクシーの初乗りは、500円〜600円くらいで、ラーメンを食べてもそんなくらいだ。ジョグジャのタクシーは、5,500ルピアだが、ミーアヤムも5,000〜6,000ルピア。タクシーの初乗りの値打ちは、麺一杯なのだ。そのタクシーが160バーツくらい行くまで、乗った。麺4〜5杯分乗ったことになる。日本で言えば、2,500円くらい、ジョグジャで言えば、25,000ルピアくらい乗った感じだ。そこは、シルパコーン大学の音楽学部のキャンパス。ぼくは、今回のビザは、シルパコーン大学を受入先にして、招聘状を書いてもらっており、こちらの学部長さんとも、手紙やメールでやりとりをさせていただいている。オーボエ奏者で指揮者の学部長さん、ジャズの先生のアメリカ人、などなど、色々な人に紹介され、さらには、校舎を全部案内される。ジョグジャではあり得ない設備。マリンバでタイ風の曲を演奏する学生。アナンの民族音楽学の授業は100人受講しているらしい。100人の講義室も見せてもらう。「君のレクチャーもここでやるから」とのこと。

一通りキャンパスを案内されると、学生の車に乗せられて、1時間。郊外のナコーン・パトムという街まで行く。ここには、世界最大の大仏塔があり、確かにでかい。この街にもシルパコーン大学のキャンパスがあり(なんと6ケ所にあるらしい)、薬学部や文学部などがあるとのこと。車を降ろされると、講堂の舞台上に椅子とマイクがセッティングされており、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、クラリネット、ピアノの学生がいて、そこにアナンが民族楽器(笛、太鼓、胡弓、チャルメラなど)で加わる。タイの音楽をもとに西洋楽譜にアレンジされた譜面をやっている。「鍵ハモ持った?」と念を押されたところを見ると、ここに出演することになるのだろうか?と思った矢先に、妻に太鼓を渡し、ステージ上に呼ばれる。

アナンによると、昨日急に学生から電話がかかってきて、コンサートが決まったらしく、学生も急に譜面を持ち寄って、曲も当日に決定。それなのに、アナンが全曲のMCを見事にやってのける。途中で、紹介されて客席から登場。即興などで参加。最後には、観客を舞台にあげて大衆歌謡を歌わせて、それの伴奏をするカラオケ状態。こういうノリがアナンは好きなのかもしれない。

車で1時間かけて戻ると、もう10時過ぎ。それから食事をして、ランブータンマンゴスチンなど南国のフルーツを購入。インドネシアと似ているけど、フルーツの種類や味が微妙に違って、面白い。