野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ナシバシアシ

6月14日のコンサートに向けて、ギギー君が打ち合わせに来る。コンサートはTembiのミュージアムで、19:30〜と決まる。タイトルは、「Konser Komposisi Kolaboratif Jogjakarta - Jepang」(共同作曲コンサート ジョグジャカルター日本)として、副題を考える。「一体、何匹の魚が核を持ったのか?」というのが副題になった。

本日、イギリスのイプスウィッチにて、パーカッショニストのエンリコが、ぼくの「No Notes てぬき」と、「まえまちアートセンター」を演奏してくれているらしい。

夜、メメットさんのスタジオでリハーサル。ギギー君、ウェリー君という20代前半の二人の若き作曲家が話している姿は、兄弟のようであり、初々しい。スボウォさん、メメットさんという50代の作曲家が話している姿は、おっさんの熟練の味わいで和む。スボウォさんが、ウーキルのことを褒めていた。

今日は、ギギー君の曲を練習し、ぼくの仕切りで一曲作った。次回は、メメットさん、スボウォさん、ウェリー君の曲もやる。今回は、4人のインドネシア人作曲家が、一体、どんなプロセスで曲を作っていくのか、その現場でのやりとりを見て、それを記録していくことが大きな目的。普段、西洋音楽の作曲をしているギギー君は、この西洋音楽ガムラン楽家の構成チームのために五線譜を書いてくるわけもなく、自分のノートに何かをメモってきていた。そして、それを全て口頭で伝えてきた。最初のシーンは、オーシャンドラムで海を表現し、そこにルバブがミニマルに音を持続し、そこに、パーカッションが速いテンポで加わってくる。鍵盤ハーモニカは、そこに速い感じで加わって、テクノロジーを表現する、というような感じ。ゴングが一音鳴らされて(これは津波を象徴)、一度、静寂が訪れた後、ルバブのメロディーと鍵盤ハーモニカのメロディーが対話を始める、といった具合だ。言葉で説明すると、みんなはギギー君の指示に従って、演奏を始める。今日は、オーシャンドラムやゴングはないので、その楽器のつもりで、他の楽器で似た音を出す。途中のルバブのメロディーについては、スボウォさんとウェリー君がいろいろ協議して、スボウォさんが何かを歌い、それに合わせてウェリー君もメロディーを奏でる感じに変わってくる。このシーンに合わせて、やぶさんにナレーションをして欲しい、とギギー君。ナレーションって何語で?英語かな、と言っていたが、日本語かな、となったり、ギギー君も揺れている。また、今度、相談しましょう、と言う。冒頭の鍵盤ハーモニカの速い場面は、やっぱり音階を決めてやりたい、とギギー君が言い出し、6つの音を指定してくる。実際に音を出しながら、思いついたら変更していく。

ぼくの方は、radiasi(放射能)、kolaborasi(コラボレーション)、imitasi(模倣)など、asiで終わるインドネシア語と、tradisi(伝統)、komposisi(作曲)など、isiで終わるインドネシア語を組み合わせて、言葉のリズムを作りたいと提案するところから始めた。すると、ウェリー君が、一人一語ずつ順番に言っていったら?と提案してきたので、6人で6語、radiasi(放射能)tradisi(伝統)komposisi(作曲)nasi(ごはん)basi(古くなった)asi(母乳)となった。単なる言葉遊びで、意味のない音韻連想の言葉の羅列だけれど、「放射能」から始めて、「母乳」という単語で終わるところに、またドキっとした。コラボレーションの中で、妊娠、子どもをイメージさせることが、頻出する。今度は、母乳かぁ。radiasi-tradisi-komposisiのリズムで作る変拍子の場面1と、nasi-basi-asiのリズムで作る場面2の二つを練習。ルバブ、鍵盤ハーモニカ、木琴、笛、ダルブッカという楽器の組み合わせだが、インドネシアでは聞かない響きの音楽になり、みんなが楽しそうにやってくれる。

日本から、アミさんが到着したので、空港まで迎えに行く。