野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

釜ヶ崎芸術大学3回目

朝、起きて、来月の京都造形芸大の特別講義のテーマと内容を書いて送らなければいけないので、「うーむ」と考えて、テーマは「だじゃれ音楽」しかないか、と書いて、内容も「ドミノだおし」や「笛るマータ」のことなどを書く。

大阪への電車の車内で、田中悠美子さんから送ってきた「千住万歳」のテキストを見ながら、節を考えたり、だじゃれを考えたり。

すっかり、「だじゃれ音楽」のことばかり考えて、釜ヶ崎芸術大学の3回目の講義へ。きっと、ここでも「だじゃれ音楽」をするのだろう、と思って行ったのに、講義の始まる直前までの待ち時間に、「鍵ハモトリオ」の個人練習していたら、すっかり「だじゃれ音楽」から頭が切り替わり、全然違う内容になりました。今日も、面白かったです。第1回の講義ノートが、釜ヶ崎芸術大学のブログにあがっていますよ。

http://www.kama-media.org/japanese/blog/2013/01/post-1685.html

家に帰って、野村幸弘さんとの対談原稿の加筆修正。「鍵ハモトリオ」のパート譜作成と個人練習の後、「だじゃれ音楽番組」で関わってもらう東京芸大の田島由深さんの卒業制作の映画のDVDを鑑賞。

鍵ハモトリオの15曲連載 第8回 田口雅英「3分間の夢想」

日本財団APIフェローシップにより、東南アジアで様々なコラボレーションを行っていることでも知られる田口さんですから、アジア的な要素のある作品になるか、との予想はありましたが、「3分間の夢想」というタイトルを先に知らされていたので、なんとなくこんな音楽かと脳裏に予想したのですが、実際に譜面で出会った音楽は、全然違っておりました。「夢想」なのに、冒頭から「えらいやっちゃ!」というノリで、お囃子風フレーズを、踊りながら演奏するのですから。「夢想」という甘い言葉に油断しておりました。これが、この人の夢想なのです。3人でずれながらのお囃子踊りは、なんとも(良い意味で)アホなテイストのノリになり、最初のリハーサルでは、可笑しくって笑いを堪えられませんでした。そうかと思ったら、次の場面では一転して、非常に美しく、民謡風のフレーズが即興的に絡まり合う静かさが来るのです。この2つの要素、静と動が交互するのです。鍵盤ハーモニカというピッチが不安定な楽器の特色を存分に活かすアジア的なヘテロフォニーの音楽であり、空間的にも移動して演奏する物語のないシアターで、演奏者が即興的に演奏できる自由が若干ある曲です。

http://www.jscm.net/?p=1777