野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ピアノソロと勝ち抜きだじゃれ

「千住だじゃれ音楽祭」として、一体いくつ目のイベントなんだろう?今日は、「だじゃれ音楽」をする日ではなく、第1部が音楽で、第2部がだじゃれ、と別々にやる日だ。えっと、思い出してみると、地元の銭湯のタカラ湯を舞台にして、とにかく始動してみた第1期(#0,#1)、ウォーキングで千住の町からだじゃれ考える第2期(#2,#3)、だじゃれだけではなく「だじゃれ音楽」に踏み込もうとする第3期(#3,#4,#5)を経て、発信の土台ができて、いよいよという第4期(#6~)に入ったという感じなのです。

#0:お風呂の音楽体験ワークショップ(2012年1月)
#1:風呂フェッショナルなコンサート(2012年3月)
#2:だじゃれウォーキング(2012年5月)
#3:グルットウォーキング、だじゃれ音楽プレゼンテーション(2012年10月)
#4:だじゃれ音楽体験ワークショップ(2012年11月)
#5:子どもだじゃれ音楽ワークショップ(2012年11月)
#6:Letuce play the piano 野村誠ピアノソロコンサート 勝ち抜きだじゃれ合戦つき(2013年1月)

そもそも、第1部が野村のピアノソロで、第2部が勝ち抜きだじゃれ合戦って、こんな変な取り合わせで、失敗のリスクが高いイベント、少なくとも1年前には実現は不可能でした。でも、「音まち千住の縁」が10月〜12月にかけて、ジョン・ケージのミュージサーカスをやったり、大友良英のフライングオーケストラをやったり、スプツニ子のHIP HOP企画をやったり、毎週末のように狂ったようにイベントを連発していった結果、よく分からない縁も少しずつ生まれているのです。ディレクターの清宮さんが、最後に野村さんの企画をやりたい、と言い続けていた意味は、こちらは全然分かっていなかったのですが、今日のイベントに行ってみて、ああ、そういうことか、と思ったわけです。こうして、ケージや大友やHIP Hopなどを展開した後に、そうした縁をつないでいく役割に抜擢されちゃったわけです。

そして、今まで連発してきて、何だか分からない企画に好意的でなかった人は、「芸大でピアノコンサート」と第1部を目当てにやってきて、何だか分からない企画にやみつきになっている音まち千住のファン層は、「だじゃれ合戦」面白そうだ、と第2部を楽しみに集まってくる。つまり、これまで「音まち千住の縁」という企画を続けてきて、それに好意的な人も、無関心な人も、両方を取り込み共存させる、という無茶なイベントは、今だからこそ実現できたのです。

で、3週間前から宣伝開始のイベントで、100席用意していたのに、幼児からお年寄りまで幅広い年齢層の人々が160名以上の人が集まるなんて、全然想像していなかった。凧揚げチームからも、Hip Hopチームからも、だじゃれ大会に出場があり、今までの町の各所でバラバラに行われていたことが、集まって出会って、始まろうとしている予感です。あちゃー、1年半やってきて、いよいよ終わりじゃなくって、いよいよ始まりって、どういうことですか。でも、始まろうとしているんで、こちらも、その空気を感じた上で、ピアノソロをやるわけです。自分に正直にピアノを弾くしかないんです。だから60分のピアノソロコンサートだったのですが、演奏は常に観客との対話であり、場との対話でした。

だじゃれ合戦は、出場者、司会者、審査員、デスクジョッキー(書画カメラ)、書道、スタッフ、そしてお客さんが、それぞれの持ち場を本当に頑張って、イベントとして成立させてくれました。これには、本当に頭が下がりました。深々と頭を下げたいです。

学力低下とか、よく言われますが、そんなことより、遊ぶ力や楽しむ力の低下の方が、ぼくは深刻だと、感じています。「楽力低下」とでも言いましょうか。楽しむ力が高まれば、過酷な現実と言われるものも、楽しめる現実に変わっていきます。今日の関係者にとって、「勝ち抜きだじゃれ合戦」は過酷な状況だと思うのですが、みんな楽しんでやっていました。すごい負荷のかかる状況だったのに、楽しんでいたのです。

鍵ハモトリオの15曲連載 第3回 大慈弥恵麻 「nasobema 2」

ナゾベームという謎の生き物を題材に描いたこの曲は、本当に音の手触り感覚が独特です。不思議な生命体の触覚を楽しむような音なのです。この曲の個性を説明するのに、漢字の難しい熟語で語るのは不適切で、語るならば、

ひらがなで、ぎおんごで、なのです。
どくとくで、ふしぎなのりです。
あえてもじにするならば、こうなるのです。




びゃーん、もごっ、ぽごっ
ひゃーん、ぺこっ、ずぼっ


ぺろぺろろぺぐ、ばれるりらりど、ぼげづじげりら
ぼべべ、ばびび、どでで、バッボボボボ


びょーーーーーーーー、ぴよーーーーーーー
ぺよーーーーーーー、ぱぉーーーーーーー


ぱっ、ぽっ、ぱっ、ぽっ、ぱっ、ぽっ
ひーほひとれーらり、ひーほひとれーらり




そして最後に、ワルツのようなものが、立ち上がってきます。

http://www.jscm.net/?p=1777