野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

だじゃれ、DVカルタ、凧あげ、だじゃれ音楽

昨日、「野村誠ピアノソロコンサート+だじゃれ勝ち抜き合戦」というイベントの打ち上げ後、打ち上げの間に映像を編集して届けにきた三浦さんと、博士論文を提出してスタッフとして濃厚に関わり始めた長津くんと3人で、ちょっとのつもりが数時間の濃厚な話し合い。自分の防御服を脱ぎ、もう一歩も二歩もディープなところで話しましょうよ、と深夜の会合。こうして信頼関係を築きながら、現場チームの動きがディープになればなるほど、ぼくに対する期待や要望のハードルも、徐々に上がっておりまして、まぁ、そうやって野村誠を信じてくれるのは、みなさんの勝手ですが、ぼくは変にそれに答えようとせずに自然体で力まずに、期待を裏切りながら期待に答えられるくらいの仕事がしたいなぁ、と思います。まぁ、自然体の脱力で本気の仕事をしたい。

そんな興奮した夜で、結局、寝不足のまま、ホテルをチェックアウト。午前中は、カウンセラーの草柳和之さんとの打ち合わせ。草柳さんは、2001年に、ピアノ曲「DVがなくなる日のためのインテルメッツォ」を委嘱してきたカウンセラーの方で、ご自身で楽譜を出版され、ピアノでこの曲を演奏しながら、暴力のない世界を訴えておられます。

草柳さんからは、さらに突飛なご提案をいただきました。「DV防止カルタ」というものを現在、制作中で、このカルタを朗読するための伴奏になるようなピアノ曲の作曲は可能なのか、と打診されました。そして、お引き受けすることにしました。再び、DVの被害者の方々とのミーティングを持ち、その方々とカルタ遊びをする経験を経て、曲を作曲していこう、という試みです。どんなものができるのか、皆目、見当がつきませんが、ぼくがやらずに誰がやるのだ、と思うと、迷うこともなく、お引き受けしました。多分、今年の12月に世界初演になると思います。

さてさて、その後、荒川の河川敷に行って、大友良英さんディレクションによる凧上げ(=「フライング・オーケストラ」)を聴きに行きました。強風のため、風の音も凄かったですが、なかなか楽しい音の世界でした。近くで聞くのも良いですが、遠くで幻聴のように聞こえるのも良かったです。そこで、芸大の学生から「野村さんも凧あげますか?野村さんは凧あげしたことありますか?」と尋ねられて、「???」と思ったわけです。凧あげしたことありますか?という質問の意味が分からなかったのです。すると、「私は、この企画に関わるまで、凧あげしたことがありませんでした。」、別の20代のスタッフも、「ぼくも今まで凧あげしたことありませんでした」、えええーーーーーーーーーーっ!今の若い人って、凧あげもしたことない人が、こんなにいるの?!!!!おじさん達の世代で当然のようにやっていた遊びを、やってないのですか?たった、20年くらいで、この世代間ギャップにおったまげました。

その後、東京芸大千住キャンパスに戻り、「だじゃれ音楽研究会」によるリハーサル。3月16日のコンサートに向けての第1回です。「ドミNo打おし」と「笛るマータ」を練習しまして、今日も、曲が発展しました。これは確かに、「だじゃれ音楽」で、音として面白い音楽でありつつ、下らない笑いの要素も持ち合わせております。この調子で、練習を積み重ねていくと、「だじゃれ音楽」を極めていくことができる予感です。

新幹線の車内で、「鍵ハモトリオ」のプログラムノートの原稿執筆を試みるも力尽きて熟睡。

鍵ハモトリオの15曲連載 第4回 Gardika Gigih Pradipta 「Melodi di Kampung」

インドネシア国立芸術大学ジョグジャカルタ校の西洋音楽学科の作曲コースを、若干20歳で卒業した気鋭の作曲家、ギギー君は、実は鍵盤ハーモニカ奏者。彼が卒業の前年に、初めてコンサートで鍵ハモを吹いたそうだが、友人達から冗談と思われ爆笑されたらしい。本人は到って真剣だったのにだ。その翌年、樅山智子の共同作曲プロジェクトに参加した時に鍵ハモを演奏し、偶々、その演奏会を見に来ていた野村誠と出会い、その後の半年間、野村誠と濃厚なコラボレーションをし、今ではジョグジャカルタ屈指の鍵ハモ奏者として、認知されつつある。この新曲は、インドネシアカリマンタン島、ジャワ島)の民族音楽のメロディーを題材に書かれているのだが、真に喜びに満ち溢れた音楽で、躍動感に溢れ、歌心に満ちている。そして、自身が鍵ハモ奏者だけあって、鍵盤ハーモニカに奏法が、非常に効果的に現れる。

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