野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

自分のやりたい作品を作りましょう

これは、ぼくの独り言ですが、独り言として読んでみて下さい。

あるアーティストのインタビュー記事を読んで、驚きました。インタビュー記事ですから、その人の言葉に編集が入っています。また、記事を読んで、さらにぼくが解釈したので、本人の意図からずれてきているとは思うのですが、それでも、そこに書いてある記事は、こう言っているように読めました。

「税金を使って行うプロジェクトに、単に自分のやりたいだけの作品をつくるのは違うと思い、仕組みづくりをしようと思った」

(本人の意図とは違うかもしれませんが)こういう発言をアーティストがして曲解されてしまうと、公的な資金は、アートなどに投入しなくても良いという理屈に結びついていきかねない危険性があります。ぼくにも、「やりたい作品をつくらないように」という無言の圧力がかかってきて、自分の意志が強くないと、「自分のやりたい作品を作ってはいけないんだ」と思い込まされそうです。公的なお金を使ってアートプロジェクトをすることに誠実に考えたアーティストの重みのある発言なので、こっちもそうかなぁ、と思ってしまいます。

でも、ぼくは「自分のやりたい作品」をつくります。税金が使われようと、企業のお金が使われようと、観客のチケット代であろうと、自分のお金を投入して作ろうと、「自分の信じるやりたい作品」をつくることこそが、一番誠実だと思うし、そうしない限り、ぼくは自分の音楽に責任がとれません。

こう言うと、だから自分勝手なアーティストの作品など、公的な資金で行うべきではない、と反論されそうです。しかし、自分勝手に「やりたい作品をつくること」のために、「仕組みづくり」が付随してきたりします。町に還元されそうもない自分勝手な妄想から生まれた個人的な「やりたい作品」を実施するために、そのプロセスで「仕組み」や「人間関係」などが立ち上がり、様々な形で町に還元されていく。これまで優秀なアーツマネジャーの方々との恊働作業で、不可能を可能にする実践が行われてきたのです。

だから、自信を持って言います。税金で行われるアートプロジェクトでも、アーティストは自分の信じるやりたい作品を作っていけばいいのです。優秀なアートマネージャーとタッグを組めば、そして、アート作品に力(豊かさ/広がり)があれば、それを町に還元していく方法は、必ず見つかるからです。

で、こういうことを、もうちょっと理詰めで、行政の方々にも分かりやすい文章で、誰か文章化してくれると嬉しいです。ぼくは、このことに、そこまで時間を割きたくないので、、、。