野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

エイブルアート・オンステージの課題と可能性について考えた

仙台メディアテークで、みやぎダンスの公演を見ました。そう言えば、えずこホールの星井理賢くんのパートナーも出演してました。

で、考えたこと。いいところがないわけではない。こういう活動自体、やっていることに、非常に意義があるというのは大前提として、でも、やはり、入場料をとって、他人の時間を2時間20分拘束することを考えると、中途半端だとは、正直思いました。では、何が問題かについて、悩みながら、帰ってきました。

「質の高い作品をつくる」、「誰もがみんなで共存できる場をつくる」、「初心者から経験者に育成する」、「東京や関西からアーティストを招くのでなく、東北で新たに指導者を発掘・育成する」、「ほかの団体が活動を始めるきっかけを作る」などを、全部、達成したいというのが、みやぎダンスなのです。

で、実際に公演を見て思ったのは、これらの全部を一斉に同時に達成しようとすると、どれも達成できなくなるとお節介に心配しました。これは、エイブルアート・オンステージ全体にもいえることだと思うので、いい考えるきっかけとして、考えようと思います。


つまり、「質の高い作品をつくる」を達成したいと思ったら、それを妥協なく徹底する必要があると思うのです。たとえば、3作品あったうちの3作品目は、砂連尾理さんが振付で、選抜メンバーでの作品でした。ところが、この作品は50分の長さがあった上に、この作品に出演しているメンバーの何人もが「誰もがみんなで」というタイプの2作目にも、掛け持ちで出演しているのです。本当に質の高さを目指すならば、砂連尾作品の出演者は、他の作品に出演すべきではないと思います。「質の高い作品」にこだわらないならば、別ですが。そして、本当に質の高さを追求するならば、現在の力量では、50分の作品をつくるのではなく、20分程度の作品を、もっと徹底的にこだわって、つくるべきだと思いました。50分の作品は、1回通すだけでも50分かかります。20分の作品ならば、50分で2回通せます。細部までこだわって、もっと稽古できます。圧倒的に稽古時間が増えます。当然、クオリティはあがります。「質の高い作品をつくる」を、一体、どこまで本気で実現しようと思うかで、実際のアプローチが違ってくるだろうな、と思いました。

あと、例えば、「誰もがみんなで共存できる場をつくる」だけならば、ワークショップだけでいい。それを、公演という形で実現する意味は何か?ひとつには、そういう場があるから生まれてくる表現が面白い場合。この場合は、ぼくなんかは、その表現の面白さはどこにあって、その面白さをどういう形で観客にプレゼンするか、ということを考える必要も考えたりします。それで、ぼくはワークショップで生まれた音楽を、あえて、プロの音楽家が演奏する作品としてアレンジすることがあります。こうすれば、作品自体のユニークさが、プロの演奏家によって、際立つからです。もう一つ考えられるのは、「誰もがみんなで共存できる場」を、ステージで見せたい、という場合。この場合だったら、「誰もがみんなで共存できる場」という状況を、もっと意図的に、観客に提示する。絶対に、このメンバーが一緒にダンスを踊っているなんて、あり得ないキャスティングをする。ゲストに岩下徹さんのようなダンサーを入れるのではなく、例えば、そこに絶対ダンスなんて踊りそうにないプロレスラーがゲストに入っているとか・・・。こんなにダンスしそうにない色んな人が、同一空間で踊っている。こんなのあり?と思える場を演出することで、だったら、私もダンスできるかも、あれならやってみたい、と思わせる作品を作りたいならば、出演者は、意図的に徹底的にバラバラにしてしまう。

などなど、ということを考えながら、東京に戻って、エイブルアート・オンステージの課題を、少しずつ考えています。

ただ、これは、ぼくの視点であって、実際に、みやぎダンスがどの方向にどう進みたいかは、みやぎダンスが決めることですし、ぼくがつべこべ言うことでもないですし、ぼくが言おうと言うまいと、勝手に進んでいくことではあると思います。

皆さん、おつかれさまでした。


3月16日、仙台で、ワークショップやります。定員20名。仙台市青年文化センター。申し込みと、問い合わせは、
みやぎダンス 
office@miyagi.org
または、エイブル・アート・ジャパン
office@ableart.org
です。