野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

元祖ミニマルミュージックーだんじり祭りにて

岸和田の「だんじり祭り」に行って来ました。あれだけの重さの地車を、人力で息を合わせて高速で曲がり角を曲がることができるのに仰天です。指揮者のタクトにより息がぴったりのオーケストラのようでもあります。地車は、普段から道路を通行止めにして練習できるわけではないので、本番以外は、体力作りやイメージトレーニングをしているわけで、ある意味、ぶっつけ本番です。そこがスリリングでもあります。

音楽的にも驚愕することがありました。それは、速いリズムのところではなく、ゆっくりになる時の太鼓のリズムで、トン、トン、トン、と不均等なリズムで3回鳴るリズムです。これは町ごとに微妙に違うのですが、敢えて楽譜に書くならば、5拍子で、トン(3)、トン(2)、トン(5)となっている。最後のトンは、町によっては、フェルマータがついて、もう少し長くなったりもするのですが、どこも安定して、この変拍子の太鼓を正確にリピートするのです。日本の伝統リズムの中に5拍子があるんだ、と嬉しくなりました。

宮入の後に、岸和田城に上ると、別々のだんじりから、この別々の5拍子が、それぞれのテンポでずれて聞こえてくる。それは、各グループは、同じリズムをループ(反復)しているだけにも関わらず、非常に複雑なポリリズムを形成してしまうのです。ライヒが初期作品で行っていたミニマルミュージックの実験や、リゲティやナンカロウが行った異なるテンポが多層的に重なる音楽の実験などは、遥か昔から岸和田城地車が奏でていたのです。