野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

畑の音楽会

6月中旬より、国際芸術センター青森での滞在制作を続けて参りました。根っこで描いた楽譜「根楽」、風が演奏するピアノ「レタスピアノ」、5線の畑「音楽畑」の3作品を展示して参りました。展覧会も残り1週間。集大成として、今日と明日に、コンサートをすることになっております。

本日のコンサートは、題して「畑の音楽会」。野村のピアノソロコンサートがメインですが、その前に、音楽畑にて、約40名の吹奏楽団と、「音楽畑」を演奏しました。天気は例によって、快晴でした。中学生たちは、事前に、畑の野菜の配置を譜読みしており、自分のパートを暗譜してきておりました。

覚えて演奏することの良さもあります。でも、ぼくは、ここで、畑をよく見て、野菜一個一個の表情を見ながら、もう一度、自分のパートの演奏を吟味するように言いました。譜面だけを軽く追いかけて演奏するのではなく、楽譜を深く読むことの重要性。それは、野菜の楽譜に限らず、楽譜を読むことで一番大切なことなのです。野菜ですから、この音符は、もっとトウモロコシなニュアンスで、この音符は、もっとレタスなニュアンスで、この音符は、もっとキャベツに、と解釈しやすいわけですが、それは、普通の楽譜でも同じことなのです。

そんなことを中学生に、リハーサルで伝えたのですが、もっと彼らと時間を過ごして、演奏することについて、譜読みをすることについて、野菜について、伝えてあげられれば、彼らの音楽への考え方が、もっと変わるきっかけになったかも、と思いました。もちろん、それはぼくが欲張りなだけで、今日の演奏も十分に良い演奏で、畑の野菜たちも十分に喜んでいたのです。

ピアノのコンサートですが、雪が全て解けてしまい、雪冷房で全く冷えなくなってしまったギャラリーBで行われました。安藤忠雄の建築は、本当に風が通らず空気がこもってしまいます。扇風機を回しながらの演奏会だったのですが、やはり、扇風機の音が気になって、ピアノの音に集中できないので、最小限の扇風機にすることをお客さんにお願いしたところ、お客さんも快諾してくれました。すると、扇風機の音の代わりに、外から虫の声が聞こえてくる中でのピアノ演奏になりました。やはり、扇風機と共演するより、虫と共演する方が気持ちいいです。幸い、あまり暑くならず、とても良いコンサートができました。コンサートが終わると、いつものように、畑に水をやり、野菜を収穫し、美味しい晩ご飯をいただきました。明日のコンサート「野菜のピアノ」では、また全然違った演奏ができる予感です。明日は、一つ一つの野菜への思いを込めての演奏会になるでしょう。