野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

フォートリエ「直方体」、ポルケ「Nessi Has Company II」、北山「言葉は海へ」

疲れがたまっていたのか、12時間ほど熟睡。清々しく目覚める。

 

オフなので、自宅でのんびり。お茶を飲み、ピアノに向かう。気がつくと、5月18日の「ノムラノピアノ✖️福岡市美術館」に向けて、新曲のアイディアをスケッチすることになる。こうやって書くと、ずっとピアノに向かっているみたいだけど、そんなことはない。洗濯機を回して、少しピアノに向かう。洗濯物を干して、少しピアノに向かう。メールの返信をして、少しピアノに向かう。買い物に行き、少しピアノに向かう。料理をしながら、少しピアノに向かう。掃除をして、少しピアノに向かう。ご飯を食べて、少しピアノに向かう。トイレに行って、少しピアノに向かう。ラジオを聞いて、少しピアノに向かう。事務作業をして、少しピアノに向かう。断続的に、おそらく今日だけで30回以上は、ピアノに向かった。落ち着きのない人間だ。〆切もノルマもないので、何曲新曲を書くかわからない。でも、作曲が好きなので、つい時間があると作ってしまう。

 

我が家のピアノの譜面台に、「福岡市美術館」で現在展示中の美術作品の画像がある。これらのうち、何曲かをピアノ曲にするのだ。ジャン・フォートリエの「直方体」は、背景が白く、その中に青い長方形。でも、直方体というタイトルだから立体で、少し浮き上がっている感じ。青の直方体の上に、何本もの引っ掻き傷のようなものがある。シンプルな構図と形だが、非常に複雑な色彩や筆づかいで、実は雄弁。右手も4音、左手も4音で、直方体の和音をつくって、この微妙な色合いを表せないかとスケッチし、響きを味わいながら、絵を眺める。

 

続いて、ジグマール・ポルケの「Nessi Has Company II」。またまた、これが本当に不思議な絵。卵から蝶の妖精みたいなのが割って出てきた図で、背後に壁紙みたいな模様。この蝶の羽にある丸だけを音符だと思って演奏するとどうなるだろう?そんな風に、この絵を楽譜として読んでいるうちに、ピアノの小品「Nessi Has Company II」のスケッチが進む。

 

続いて、北山善夫の「言葉は海へ」という竹や紙などによる立体。これは、写真を見ながら、その写真の上に五線を書き込んでみた。「言葉は海へ」というオブジェの形を五線紙に投射して、それをピアノで弾いていると、独特な味わい。この美しい形に感謝。

 

ということで、美術作品を題材に、何曲かスケッチした後、ピアノ曲の譜面を書く。とりあえず、昨日スケッチした「溶鉱炉」から手をつけて、「直方体」、「Nessi Has Company II」の譜面を書き、ピアノで弾いてみる。「溶鉱炉」は難しく体力がいるので、結構、練習した。福岡市美術館で、展覧会見るの、楽しみだなぁ。作曲した曲の作品は、急に自分との距離が近くなる。

 

もっと作曲していたかったのに、気がつくと夜になり、門限ズのスカイプ会議の時間。鳥取での11月のゲキジョウ実験!!!「銀河鉄道の夜→」に向けての今後のスケジュールについて話し合う。

 

ちなみに、美術作品を音楽にしたプロジェクトは、主に以下の通り。

2004年 The Grandy Art Gallery(イギリス)でゴヤの作品を楽譜として解釈するワークショップ。(野村幸宏の映像「Goya's Room」として記録)

2005年 徳島県立近代美術館で、美術作品を楽譜として解釈するワークショップとコンサート。(野村幸宏の映像「モダンアートの音楽」として記録)

2007年 群馬県立館林美術館で、鶴岡政男の絵画を楽譜として解釈するワークショップ。(記録音源は、美術館が限定50部作成)

2009年 福岡市美術館で、美術作品を楽譜として解釈するワークショップ。(泉山朗土の記録映像あり。野村誠がピアノのための21の小品「福岡市美術館」を作曲し、楽譜を美術館で配布)

2012年 静岡県立美術館で、美術作品を楽譜として解釈するワークショップ。(野村誠がピアノのための11の小品「静岡県立美術館」を作曲し)

2013年 アーツ前橋の開館プレイベントとして、美術作品を楽譜として解釈するワークショップ。(野村誠がピアノのための9の小品「アーツ前橋」を作曲。ピアニストの岡野勇仁が録音し、展示と合わせて聞けるように)

2013年、名古屋市美術館での絵本原画展で、絵に合わせて、野村の鍵盤ハーモニカ即興コンサート。

 

2005年の徳島のワークショップのレポートを見つけて、読んでみた。14年前のこと。

https://art.tokushima-ec.ed.jp//clublog/article/0007629.html

 

美術館で美術作品から音楽をつくるワークショップをするのは、本当に面白く好きだ。もっと、やりたいなぁ。

 

www.fukuoka-art-museum.jp