野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

22年ぶりの再演ープリペアド・ピアノのための「Ragamuffin Dance」

本日、ジョン・ケージ生誕100周年でした。ケージの生誕を祝して、「野村誠×ケージ」というコンサートを行いました。平日の夜、しかも、森の中にあるACAC(国際芸術センター青森)という場所にも関わらず、予想以上に多くの方がご来場下さりました。嬉しい誤算です。

本日のプログラムでは、ケージに関するぼくの思いを語りつつ、ぼくがピアノを演奏する、という形で進行しました。そして、休憩後の1曲目は、ケージが発明したプリペアド・ピアノ(ピアノの弦に、ボルトやゴムなどを挟んで、音色を変えてしまう)に敬意を表し、プリペアド・ピアノのための曲を演奏しました。それは、1990年9月15日に、京大西部講堂世界初演した「Ragamuffin Dance」という曲で、大学4回生、若干21歳の頃の作品です。

この作品を作曲して以降、22年間、ぼくは様々な音楽を実践してきましたが、プリペアド・ピアノを弾くことすらありませんでした。本日は、22年ぶりにプリペアドピアノを弾き、「Ragamuffin Dance」も22年ぶりに演奏しました。

あと、ケージに敬意を表しつつ、演奏をしていると、ケージから、「君は君の音楽をすれば良いのだ、ケージ(鳥かご)から自由になれば良いのだ」と言われている気がして、当たり前のことですが、ぼくはぼくの音楽を好きにするに限るのだ、と思いました。

また、ケージが京都賞を受賞した1989年、「ケージバン」というイベントを京大西部講堂で3日間に渡って開催し、ケージの作品10曲を含む、40曲に渡るコンサートを開催したのですが、その時に、出会って、丸太をひきずる音を味わうパフォーマンスで共演させていただいた奥田扇久さんが、青森まで遊びに来てくれました。奥田さんとは、23年前に出会って以来、様々な場面で共演してきましたが、ぼくの音楽人生の出発点とも言える「ケージバン」でのセッションを思い出しつつ、ケージの生誕100年の日に、セッションできるのは、なんとも言えない気分でした。ケージは、いわゆるインプロヴィゼーションには、否定的だったと言われていますが、ケージの誕生を祝う気持ちを持って、我々が我々の好きに自由に音楽をすることが、ケージに対する最大の賛辞だと思うので、奥田扇久さん、椎啓さん、やぶくみこさん、と4人での即興セッションを行いました。このセッションは、奇跡のような出会いのセッションで、生きていて良かった、と改めて思う時間でした。

野坂館長の言葉ではありませんが、「本当にありがとう」と思う一夜でした。