野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

大阪人のエンターテイメント魂 こども熱帯音楽祭ワークショップ3回目

「こども熱帯音楽祭 in大阪」(8月31日)に向けてのワークショップ。本日、ぼくが一番学んだのは、大阪人のエンターテイメント魂です。ぼくら芸術家は、芸術の実験や美意識を優先しますし、それを追求することこそが、観客への最大限のサービスだと考えておりますが、観客をエンターテインする大切さを忘れてはいけません。観客に不親切すぎるのは良くないですが、観客に媚び過ぎてもいけないので、ぼくの場合は、その辺りのバランス感覚を大切に活動しております。まずは自分がやりたいことを最優先しながらも、それを観客とシェアできる場づくりを、どう実現するか?その辺りは、ぼくの腕の見せどころだと、思っております。

しかしです。今回の豊崎東小学校の子ども達とのコラボレートでは、アイディアが湯水のように湧出る吉井くん(6年生)を特別扱いして進めており、今日一日、吉井くんの意見を聞いてみて、彼の考えるステージは、もっと派手なエンターテイメントなのではないか、と考えました。今回は、作曲家の野村誠の価値観で作品を作るのではなく、6年生の吉井くんの価値観で作っていきたいのです。(吉井くんをリーダーとして進行している経緯については、8月19日の日記と、22日の日記に詳しく書きましたので、そちらをお読み下さい。)

http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20120819
http://d.hatena.ne.jp/makotonomura/20120822

今日、吉井リーダーと打ち合わせをしたり、ワークショップを行う中で、徐々に吉井リーダーの目指す舞台のイメージがつかめてきました。彼は、観客を楽しませたいのです。「普通に座って、普通の楽器をやってるだけやったら、しょーもない。もっとペットボトルを入れるとか、佐久間さんみたいな面白いダンスを入れるとか。」

彼の発言を聞き入れていくと、そこには、大阪人らしいエンターテイメント魂がいっぱいで、舞台上で派手な演出をして観客を喜ばせたい、というサービス精神が分かりました。このサービス精神は、インドネシアの人々にも共通するもので、これこそ「熱帯音楽祭」で大切なものなのではないか、と思いました。

本日から参加の川端くん(6年生)と、吉井リーダーと、野村誠の3人で、「しょうぎ作曲」を行い、新曲を作りました。ネタばれになるので、ここでは内緒にしておきますが、ガムランやペットボトル以外に、意外な電化製品まで導入して、カラダをはって笑いをとりにいく吉井リーダーは、さすがの大阪人です。初参加で、ガムランに初めて触るにも関わらず、クノン、クンプール、クンダン、スレンテム、サロンと、違ったタイプの楽器を探求した川端くんの職人ぶりもさすがでした。

残り少ない練習で、どこまで大阪のエンターテイメント魂を実現できるか分かりませんが、最大限やってみたいです。

「熱帯音楽祭」は、金曜日の昼間という時間帯ですが、ご都合がよろしければ是非お越し下さい。詳細は、こちらです。
http://www.ur-plaza.osaka-cu.ac.jp/2012/07/20120831.html