野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

徳島に行ってきました

早朝、京都市長選挙に投票してから、徳島へ。震災や原発事故を経て、市民の一人ひとりが政治に積極的に関心をもち、史上最高の投票率になるのではないか、と期待して、一票を投じる。

今日は、日本音楽療法学会四国支部大会に、講師として行ってきました。「人との関わり、音との関わり、場との関わり」と題しての90分。コミュニケーションという正解のないナゾナゾについて、語ってきました。「即興演奏ってどうやるの」という本の第3章に書いたことを、さらに奥深く、現在の自分の言葉で説明してきました。

他者の言葉、表情、メッセージを、自分なりに理解し、解釈する。それは、あくまで、こちらの勝手な理解で、相手の意図など、正しく読み取るなどは、不可能かもしれない。でも、そうしたずれが存在するからこそ、コミュニケーションは尊い。他者の中に自分を発見していく作業がコミュニケーションであり、それは自分の中に他者を発見していく作業でもあります。

「ギャー」と叫んでいる人がいて、理解不能だな、ではなく、「ギャー」と叫ぶ人の中に、自分を探す。自分の文脈では、この「ギャー」はロックのボーカルで、8ビートが欲しいと思うならば、勇気を持って、8ビートで応える。それは正解じゃないかもしれない(そもそも、正解も間違いもないかもしれない)。拒否されるかもしれないし、賛同されるかもしれない。でも、こちらが勇気を持って反応しない限り、拒否も賛同もされない。勇気を持って8ビートを演奏しちゃうことが、コミュニケーションの始まりになったりする。

ぼくにとって、作曲は、自分の閉じた世界観を構築することではなく、他者とコミュニケーションできるように自分の世界観を提示し開いていくこと。そして、それは交わる人によって、柔らかく変化する弾力性のあるもの。

現在、作っている「復興ダンゴ」でやっていることも同様で、老人たちの言葉、表情、仕草の中に、ぼくが共感できるメッセージを探し、それを作品化しています。

音楽療法士の皆さんとの短いけれど濃密な時間、ぼくにとっても大切な財産です。ありがとうございました。

京都に戻ってきて、選挙速報を見ると、投票率が36%と知りました。選挙の結果よりも投票率がショックです。期日前投票もできたのに、64%の市民の皆さんが、投票に行かなかったことに、失望しました。でも、がっかりしてばかりもいられないので、この失望から次なる希望を地道に探そうと思います。

http://sakuraen.blogspot.com/