野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

解けないナゾナゾをつくる〜日本国際教育理解学会の研究会にて

聖心女子大学で開催された日本国際教育理解学会の「文化的多様性と国際理解教育」という研究会にて、ワークショップをしてきました。そこで、しょうぎ作曲をしたり、ホエールトーン・オペラからの抜粋をとりあげたり、歌を作ったりすることを通して、色々語りました。ちょっとメモしておきます。

アーティストの仕事は、解けないナゾナゾをつくること。解けないナゾナゾをどうやって解くかをみんなで考えていくことだ、と思う。教育の場には、答えを用意したナゾナゾが多いし、ナゾナゾが解けるようにガイドをしていくことも多いと思う。でも、世界にある様々な価値観を認めれば、ナゾナゾはどんどん解けなくなっていく。ナゾナゾが明解に解けるために、自分に都合の悪い考え方をいないことにしている危険性に、常に注意が必要。そして、そこに警鐘を鳴らせるのも、アーティストの仕事。だから、アーティストは、隠蔽されてしまう「解けないナゾナゾ」を、世間の目に曝すのだと思う。

このことの意味とか目的とか意義とかについて、考えてしまう前に、まずナンセンスで意味不明の解けないナゾナゾをつくること。すると、ナンセンスな言葉の羅列でも、音の寄せ集めでも、そこに意味を見出し、そこにメロディーを聞いてしまうのが、人間の性です。そして、多様な人がいるだけ多様な意味を見出していくのが、芸術で、そのずれを楽しむことが、コミュニケーションです。

禅のようになりますが、「色即是空」ではないですが、音楽を成立させるのは、そこに音楽がある、と意識することです。なんだって、作曲になります。「ラーメンのレシピ」は作曲ではありません。でも、「ラーメンのレシピ」が音楽だ、楽譜だ、と思った瞬間に、意識した瞬間に、そこに音楽はあるんです。そして、実際、今はやりませんけど、「ラーメンのレシピ」を曲にすれば、きっと、それは面白い曲になることは、イメージできます。今、ここに音楽があります、と言って、今、20秒くらい沈黙すれば音楽が聴こえるはずなんです。(20秒沈黙)。時計と空調と遠くで人が話している、という音楽が、聴こえました。音楽がある、と言った瞬間に音楽があり、それを意識しなければ、音楽はないんです。