野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

無力な自分を見つめるところから始める

2月18日(土)の野村誠:ドキュメンタリー・オペラ「復興ダンゴ」公演の前売り券は完売いたしました。18日の公演の当日券は10枚程度、当日に販売になる予定です。詳細は追って、このブログでもお伝えします。なお、2月19日(日)のチケットは、14時の回、18時の回ともに、前売り券がありますので、予約フォームから、ご予約受けつけております。

予約はこちら
http://stspot.jp/ticket/remix2012/

本日も、「復興ダンゴ」に向けての砂連尾理さん(ダンサー)とのリハーサルをしました。今日は、大切なことについて、徹底して語りまして、そのことで作品も大きく進展しました。「復興ダンゴ」という舞台を、なぜ、ぼくらはやるのか。昨年の大震災や、原発事故が起こらなかったら、ぼくらは、この作品を作らなかったでしょう。今の日本の(世界の)現状を受け入れた上で、世界に対してどう働きかけていくかを、一緒に考え、立ち止まり、一歩を踏み出すために、今、ぼくたちは、この作品を作っています。だから、リハーサルは、身体で考える作業と同時に、言葉で確認し合う作業でもあります。そして、自分の直感を信じ、自分の信念を疑い、絶望の中に希望を探し、無力感を原動力にする術を探す。

老人ホームのお年寄りの言葉の中に、本当に希望があると強く信じて、作品を作り続ける精神力。お年寄りの身体の動きの奥底に潜むメッセージを愚直に解読していく態度、お年寄りの言葉のイントネーションから、世界を反転させる希望のメロディーを探そうと聴き続けること。自分のエゴを捨てて、映像の中にあるメッセージに、ひたすら耳を傾けることで、作品がどんどん形を表してきています。

明日は、京都市長選挙。投票に行くのも、「復興ダンゴ」の創作のプロセスです。

http://sakuraen.blogspot.com/


現実逃避するのか
現実逃避しないか


もう一言だけ、自分のメモとして書いておきますね。自分の才能のなさを感じ、自分の無力を感じ、自分の力不足を感じ、自分の小ささを感じた上で、「復興ダンゴ」の創作活動をしています。自分の存在も現在の能力も、野村誠以上でも以下でもありません。それが現実です。そして、そうした現実から目を背けて、自分を認めてくれるコミュニティの中でだけ活動すれば、自分は才能があり、有能で、影響力が大きい、と夢を見ることができるでしょう。でも、それは現実逃避です。そうではなく、自分の無力を認めて、その上で自分ができることの可能性に向き合うこと。そこから、始めるしかないのです。食品の放射能汚染でも、内部被曝でも、農薬でも、添加物でも、向き合うのがイヤだから目を背けたり、考えないようにして、夢の世界に生きるわけにはいかないのです。現実に目を向けるのは、時に痛いかもしれない。まして、今の我々の現実は、本当に目を背けたいことがいっぱいです。自分の無力さや無能さを認めるのは、楽しいことではないかもしれない。でも、そこを見るところから始めないと、何も始まらないと思うのです。夢を見ているだけで逃げ続けるわけにはいかない。だから、自分の才能のなさも、作曲の下手さも、ピアノの技量のなさも、構成力のなさも、全部ちゃんと受け入れた上で、そして、自分の能力を理論武装の言い訳の衣などで防御したりせずに、勇気を持って等身大の自分の音で発信しようと思うのです。逃げません。これが、今のぼくの音楽です。