野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ギギー君とのコンサート

 いよいよ「トゥンビ文化の家」でのコンサート「ダルマさんが旧友に会う」が開催されました。夜、エアコンのない室内での開催で、窓は全て開け放たれています。椅子がずらっと並べられて、椅子で聞く人もいるのですが、建物の外から、立って見ている人もいます。前に椅子に座っているお客さんがいるのですが、横には、窓の外から立ち見しているお客さんがいて、インドネシアらしいなぁ、と思いました。
 ギギー君が、1年前に鍵ハモを初めて人前で演奏した時、子どもの楽器を演奏していると、みんなに笑われたそうです。今日、彼とぼくでの鍵ハモデュオを、観客みんな真剣に聴き入りました。インドネシアの鍵盤ハーモニカ史の本当に大きな1ページが刻まれた瞬間でした。
 ギギー君の新作「Kampung Halaman」を世界初演しました。この曲は良い曲なので、また再演していきたいなぁ、と思います。
 最後のコラボレーションには、スワルトさん、スボウォさん、ウッティさんも踊りで参加してくれました。3人ともジャワの古典舞踊をベースにしながら、即興コラボレーションを得意にする人々です。砂連尾さんとのセッションは、とても面白かった。ただ、少し残念だったのは、エブン君(6歳)、エルド君(10歳)は、今までずっと一緒に即興セッションをしてきたのですが、本番は、最初から最後までお父さんと一緒に古典のワヤン(影絵芝居)をやり続けて、即興に全く関わらなかったことです。推測ですが、お父さんから古典をその通りやるように、と指示があったような感じです。お父さんは、本番前の打ち合わせでも自由に即興でOKと言っていただけに、本番、驚きました。これも推測ですが、お父さんにとって、自由な即興は「単なる子どもの遊び」にしか見えず、それを人前で披露することは、あってはならないこと、と思えたのかもしれません。しかし、あの自由な即興の中で子どもが伝統の手法に基づきながら繰り出す即興にこそ、ぼくは未来を感じていたので、それが現れなかったことは残念でした。しかし、ここにこそ、伝統とコンテンポラリーを巡る現状や課題があるのかもしれず、貴重な体験をさせていただきました。
 何にしても貴重な体験ができたことに、ギギー君に感謝。参加してくれた皆さん、ありがとう。