野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

自由な小学校の鍵ハモ少年

 マングナン小学校へ。この学校は、自由な教育をしている独特な学校。授業時間なのか、遊びなのか分からない感じで、子どもたちが学んでいる。教師が生徒を管理せずに表現の自由を保障しても、教師自身が校長先生や教育委員会などに自由を約束されずに管理されているケースを、これまで日本で何度か目撃してきました。この学校の良いところは、生徒も管理されていないが、教師も管理されていない。生徒にも教師にも自由が約束されているところが良い。
 Batik ceplokという染め物をやっている子どもたちがいた。布やシャツのところどころに、ビー玉を入れて輪ゴムでグルグル巻きにしておく。そうすると、輪ゴムを巻いた部分だけが色に染まらないので、染めた時に、同心円上の白い部分が、何ケ所もできて、模様になるというもの。これ、とても簡単できれいで、楽しそう。ぼくもやりたいな、と思った。
 ぼくが最初に来た日に作った「ダルー先生」の歌は人気。子どもたちは、ぼくの顔を見ると、歌ってくれる。今日は、子どもたちは、グループごとに、ボディ・パーカッションで曲を作っていた。
 今日の一番の事件は、メロディカ少年ヘルマン君。ヘルマン君は、ぼくに聞かせるために、ボタン式のメロディカ(ドイツ製の鍵盤ハーモニカ)を持参していたのだ。みんなにやれやれと薦められても、とても恥ずかしそうにしていて、なかなか出てこなかったが、ようやく出てくる。彼は、ピアノを習っているらしい。たどたどしく弾くメロディーに合わせて、ぼくも鍵ハモを吹く。拍手喝采。他の曲もできる、と聞くと、たどたどしく「Cublak-cublak suweng」を吹いてくれるので、これもセッション。恥ずかしそうに何曲もセッションした。その後のグループでのボディ・パーカッションの時も、彼は鍵ハモを吹き続けていた。ぼくが行くと、「ダルー先生」のメロディーをずっと吹いている。そこで、ぼくも、彼に合わせて伴奏すると、エンドレスに吹き続ける。グループのメンバーは、それに合わせて、手を叩いたり、足を踏んだりしてリズムをとる。未来の鍵ハモ奏者が、インドネシアから出てくる予感。10年後には、インドネシアで鍵ハモブームが起こっている可能性は十分あり得る。