野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ギギー君とのセッション5回目かな

 相変わらず、インドネシアジョグジャカルタにおります。
 昨夜、無事、震災のためのイベントを開催することができました。今日は、久しぶりにのんびり寝られたので、ちょっと疲れとれた。
 午後、中川真さんが訪ねて来ました。昨夜のイベントでは、挨拶などを担当していただき、ありがとうございました。たったの3日の滞在で本日帰国。お忙しそうです。甘いものでも食べながら、じっくりお話をしたいところですが。
 「ジョグジャの舞踊の層の厚さに、驚きました」
というぼくに、真さんは、
 「昨日出ていなかった人でも、Didik Ninithowaというクロスジェンダーの才能のあるパフォーマーがいて、踊っている中で女性から男性に変わっていったりして、それが見事」
とのこと。ジョグジャの舞踊家の層は厚いので、色々、舞踊家とコラボレートしていこうと思う。
 真さんは、三陸地方の民俗芸能などが、今回の震災で消滅してしまうことを恐れての支援を考えているとのこと。そういう芸能がなくなると、その地域自体のエネルギーが減少してしまうし、芸能のことを今考えている人はいないだろうから、その調査も兼ねて現地には行こうと思っている、とのこと。

 ジョグジャで唯一の鍵ハモ奏者で作曲家のギギー君が来ました。つい先日、音楽学科を卒業したばかり。真さんに紹介したら、非常に緊張していました。彼は勉強家で、真さんの本を読んだこともあり、ジョグジャのサウンドスケープについての記述が、新鮮だと言ったこともあります。真さんのリクエストで鍵ハモ演奏を披露すると、相当緊張したようです。ジャワ人らしいですね。
 真さんが帰った後、ギギー君との鍵ハモデュオのリハーサル。5月26日にコンサートをすることになっているが、5月上旬でも可能で、日程を変更しても良いか、とギギー君。昨夜のコンサートの触発されたのか、早く本番をやりたい気分になっているようです。
 ギギー君は、非常に優秀で、色々な情報の収集能力も優れています。
 「メメット先生の石の音楽のリハーサルを見たけど、面白かったよ。」
とのこと。昨日のイベントで口琴を演奏してくれた作曲家のメメットさんは、西洋音楽学科の作曲の先生。来月ジャカルタで石の音楽を発表するので、現在、練習中らしい。ぼくも、今度、練習を見に行こう。
 また、ギギー君は、80年代にジャカルタで開催された「インドネシア若手作曲家週間」という分厚い冊子を、メメットさんから借りたそうで、これが、非常に興味深い。インドネシアの作曲の前衛たちを知る上で、非常に参考になるので、今度コピーさせてもらうことにしました。
 本日は、「ジャワのスリン(笛)のように演奏する曲」をやってみましたが(D,E,G#,A,C#の5音)、これがなかなか良かった。続いて、「(箏の)平調子でやりたい」というので、D,E♭,G,A,B♭の5音で即興。さっきの曲は、スリンのイメージがお互いにある上での即興。今度は、彼の方に日本の箏のイメージがないので、音階は正しくても、全く別なイメージで進んでいきます。そこが面白い。
 あと、彼がピアソラが好きで鍵ハモを始めたらしいので、ピアソラ風の曲も作ってみようということで、コード進行を考えました。ただし、一つ目のコードを彼が決めたら、2つ目のコードをぼくが作るといった感じで、交互に決めていきます。こうやって作ると、お互いにコントロールしきれずに、コード進行が作れるのが面白い。これは、また、やってみようと思います。現在のギギー君とのレパートリーは、

1)in F(即興をもとに構成をつくった曲)
2)微分帖作曲のメロディー
3)詩の朗読
4)カール・ベルグストローム=ニールセン断片に基づく
5)「かごめかごめ」ヴァリエーション
6)プロムナード(音階とリズムを決めて作ったメロディー)
7)ジャワの笛
8)日本の箏
9)タンゴ


まだまだ、色々、できそうです。

 夜、ブンタラブダヤ(コンパスという新聞社の持つアートセンター)で、日本人による美術展のオープニングパーティーがあり、ピアノ演奏もあるらしいので、出かけようと思ったのですが、まだ体調が本調子ではなく、家で休むことにしました。展覧会は、しばらく開催です。