野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ゴミの問題 

日々、生活していると、大量のゴミを、どうしようか、と考えてしまいますね。

現代を生きる芸術家達にとっても、ゴミの問題、環境の問題は、避けては通れないテーマ。

彫刻家なんかだと、作品を作ると、大量にゴミが出たりします。物を作ることを目的にしているのに、同時にゴミを作ってしまう。そのことに、どう折り合いをつけるか考えてしまうわけです。

かつて、ぼくにとって、様々な場で思いついた曲の断片メモは、全てゴミのようなものでした。そうした断片は、所詮、作品になり得ないゴミと思っていて、でも、どこかで使えるかも、と思って、長年、保管していたりしました。しかし、それらが曲になることなどなく、どんどん鮮度も落ちるし、捨ててしまった方がいいのに、なかなか惜しくて捨てられない。たまる一方です。

そんなぼくが、こうしたゴミと思っていた曲の断片をもとに、作品を作ったのは、11年前の1999年。「FとI」という曲でした。また、その直後の2000年に書いた「たまごをもって家出する」という曲にも、こうしたゴミだと思った断片が、曲の中に採用されました。自分の中でのリサイクル活動。

そして、この2作品は、その後の10年間に頻繁に再演されたので、あれらの断片をゴミとして捨てなくて良かった。再利用ができました。

これは、ぼくにとって画期的な出来事でした。毎日、大量に生み出しているゴミの中に、こんな可能性があったのか。それ以降の10年間、ぼくは、ゴミのような些細な物が、作品として結実する、ということを、伝えたくって、色々な形で、そうしたことをやり続けてきたような気がします。

ぼくにとってのゴミ問題は、日々の音楽活動で生まれてしまった作品などを、その場限りで楽しんでゴミにしないこと。何か別の資源として再活用できる可能性を考えることでもあります。