野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「野村誠×北斎」千秋楽

おかげさまで、3回のトークセッション、2回のワークショップを経て行われる、全6回のプログラムの最終回のコンサートを、大盛況で終えることができました。

今日、初めて参加するお客さんもいるだろう、ということで、ずーっと、上田謙太郎さんに映像を撮影してもらっていました。冒頭に、上田編集の約10分のドキュメンタリー映像の上映があって、過去5回の流れを、初めての方にも追体験してもらうことができたので、非常にコンサートに入りやすかったです。

荒野真司さんの舞台美術がシンプルなのに、懐が深く、場を作ってくれました。会場が当日入りしかできなかったので、舞台美術のセットの準備、照明の仕込みなど、全て、当日に行ったのですが、その制約の中で何をしようか、という工夫が、とてもよかったです。それは、箏が13本の音だけで演奏できるように、少ない音でやりくりしていくような感覚にも近いのかもしれません。

コンサートは、6部構成で

1)映像上映

2)「北斎序曲」、「南の北斎」(いわゆる5線のスコアに書いた2曲)

3)「鳥風」、「ODORO ODORO CIRCUIT」(文章など指示書きによる楽譜の2曲)

4)「町人の音楽」、「遊び人の歌」、「自由と虚無僧の狭間で」(楽譜はなく、演出などを口頭で伝えて作った3曲)

5)「木琴コンチェルト・リミックス」、「マイナーバンド」(編集された映像の通りに演奏する曲)

6)「後の祭り」(野村も入った5重奏」

という流れで、それぞれの間に、野村のだらだらトークが入り、観客は自由にトイレに立つという形をとりました。各回のトーク中に、トイレに立つお客さんの数の多さにびっくりしたし、飲食しながら聞いてください、とカフェの宣伝をしたら、あっという間に行列ができて売り切れたりしました。これも、荒野さんの美術が作り出した場の雰囲気も大きかったのかも。

箏の竹澤悦子さんとのお仕事は、実に10年ぶりなどで、今回ご一緒するのにどうなるか、不安もあったのですが、10年経って、ますます変幻自在な魅力の演奏で、素晴らしかった。

五線譜の音楽は普段全く縁がない尾引さんが、「北斎序曲」と「南の北斎」を完璧に練習してきてくれ、やらされている感の全くない演奏、彼の音楽として演奏してくれたことも良かったです。

木琴の鍵盤のサイズも初めてで、鍵盤の並びも複雑で、しかも、四種類の木琴ごとに、音の鳴りも音階も違う。その状況で演奏した片岡さん、さすがです。

今回、初顔だった尺八の元永拓さんは、この濃いメンバーの中で、どうやって存在できるのだろうか、とお会いする前は、不安が大きかったのですが、この人と出会えて良かった。不安は吹き飛び、彼の持ち味を堪能しました。また、これからも色々できそうです。

それにしても、やってみたかったことを実現できて、非常に嬉しいです。制作の碓井さんや、アサヒアートスクエアの鈴鹿さんと、巣鴨の喫茶店でお茶をしながら、妄想を語り合っていたことが、形になりました。

これは面白いので、第2弾、第3弾とやりたいですねー。

皆さん、本当にありがとうございました。