野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

コレクション/コネクション/コラボレーション

また、福岡に来ました。いよいよ、ピアノ組曲福岡市美術館を作曲するプロジェクトが始まります。美術館で何か音楽のプロジェクトをやって欲しい、と福岡市文化芸術振興財団から委嘱があった時に、考えたわけです。音楽家が美術館で音楽のプロジェクトをするとは、どういうことかと。美術館でコンサートをする、と言っても、なかなか美術館でしかあり得ないプロジェクトには、ならないなぁ、と。

で、考えたのが、美術館で楽譜を無料配布する、というプロジェクトです。美術展に行って、作品解説のプリントみたいなのが、ご自由におとり下さい、と置いてあることもある。だったら、楽譜がご自由におとりください、と置いてあったら、どうだろう?そして、その楽譜は、展示されている絵をもとに作った曲だったら、、、、。

こんなアイディアなのです。

これは、ぼくの作品の楽譜を、美術館という場所で、不特定多数の人にばらまく、という実験です。これまで、ぼくの作曲した楽譜は、人の手から手に渡っていくことが多く、また、出版されている楽譜にしても、そんなに大量生産されるものでもないので、ごく限られたプロの音楽家や意識の高い音楽愛好家の眼に触れるだけです。では、ぼくの音楽を、ぼくの楽譜を不特定多数の人に配ってしまうとどうなるか、一体、何が起こるのか?そういう試みです。

美術館の約23の空間に仕切られた展示室、それぞれから一点の絵を選んで、その絵を題材にした短いピアノ曲を作曲し、その楽譜を無料配布する。持ち帰った人は、実際に弾いてみるだろうか?誰かピアノの弾ける人に弾いてもらうだろうか?展覧会が終わってから、その楽譜を演奏する人が出るかもしれない。楽譜の曲を演奏して、この曲の題材になった絵を見たいと美術館に足を運ぶ人が出るかもしれない。

さて、そうしたピアノ曲を書くのは、ぼくの仕事なのだけど、明日からの3日間のワークショップで、ピアノ曲の原案になる絵を参加者の人と選び、その絵を楽譜だと思って解読するワークショップをします。ワークショップでは、ピアノ曲にすることなどは気にせずにやります。そして、ワークショップの成果をもとに、ぼくが約20曲のピアノの小品を作曲します。そして、これらの楽譜を無料配布するのです。

一体、どの絵が選ばれるだろう?どんな原曲ができるのだろう?それを、ぼくはどんなピアノ曲にするのだろう?

ぼくはワクワクしながら、福岡にやって来ました。


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