野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

低音デュオ

13日からイギリスだというのに、慌ただしい中、でも、聞いてみたくて、このコンサートに行って来ました。

●低音デュオ2nd LIVE
6月11日(木)19:00〜/公園通りクラシックス
【演】松平敬(voice)、橋本晋哉(tuba)
【曲】
M.チェミツキ/Borju a reten...
C.ウォーリネン/Never again thesame
湯浅譲二/天気予報所見
神長貞行/Digital Box
田中吉史/科学論文の形式によるデュオ(委嘱新作初演)
鈴木治行/沼地の水(委嘱新作初演)
松平敬/ae?
M.カーゲル/ミルム
橋本晋哉/塔の音楽
M.カーゲル/バベルへの塔

東京での現代音楽のコンサートに、本当に久しぶりに来た気がする。久しぶりに見る顔もいろいろ。そして、こういうコンサートがあると東京に住んでいて良かった、と思う。演奏もとてもよく、プログラムも充実。そして、バリトンとチューバの音を、満喫させていただきました。

田中さんの学会発表のような曲は、学会に参加したことがほとんどない者にでも、その面白さは音楽として楽しめるのですが、「結論(conclusion)」をチューバが簡潔に述べると終わってしまうところなど、学会だったら、質疑応答の時間があるバージョンもあり得るかもしれません。ただし、これは、「学会発表の形式によるデュオ」ではなく、「科学論文の形式によるデュオ」だったので、質疑応答じゃなくって、参考文献などが、つくのかもしれませんが、、、。

前半の最後の曲、神長さんの曲の途中で、お客さんが突然倒れ、救急車を呼ぶ、という事件が起こり、演奏が中断。ぶっ倒れたお客さんも大丈夫だったようですが、そこで、休憩になり、後半、もう一度、神長さんの曲を最初から聞けました。現代音楽の作品を一日、二度聞くのは貴重な体験でした。確かに同じ曲でした。

鈴木さんの作品を聴くのは、本当に久しぶりで多分10年ぶりくらいだと思います。新作は、バリトンが、最初は、チューバとユニゾンで、階名で歌い、時々、チューバがロングトーンの時に、「ロングトーン」と歌ったり、フラッターの時に「フラッター」と歌ったり、技法をそのまま歌詞にして歌ったり、それが、チューバと関係を持ったり持たなかったりする音楽で、非常に面白かったのですが、これは、山下残のダンス作品を思い出しました。多分、山下残くんは、鈴木治行さんの作品を知らず、鈴木さんは、残くんの作品を知らないでしょうが、残くんの振付けの内容を全部その場で言葉で言いながら、それに合わせて踊っていく作品と、形態が非常に似ているのです。