野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

男子と女子の創作の違いがあるのか

平盛小学校でのホエールトーン・オペラの3日目。

1年生は、昨日の「ワニバレエ」に続いて、今日は「どすこい」をやる。

6年生は、男子と女子に分かれて活動。6年生の女子は、みんなの前で発言することが恥ずかしいし、周りに歩調を合わせる傾向があるので、グループで、しかも男女混合でないグループで活動しないと、意見を発表しにくい、という女の子の意見を、まともに聞いた結果、こうなっている。

で、今日は、男子は図工室で、女子はランチルームで活動。ぼくは、男子の担当になった。それぞれ6つのグループがあって、違った6つのシーンの音楽を作るのだが、よりによって、全部のグループが全く違った曲の作り方をする、ということにした。つまり、




1 バナナの木:俳句を作って、それを歌詞にする、リズムを決めて、ホエールトーン・スケールから5音選んで音階を決め、その俳句の言葉を全部「あいうえお」の母音にして、その音を5音音階に対応させて、メロディーを作曲



2 どうやって実がなるの:一人一色、一本の線を描くことで、共同で絵の具で絵を描く。これを何枚もやって、それを楽譜として解読する




3 バナナケーキレシピ:バナナケーキのレシピの言葉をつくる、リズムを考える、リズムに合わせた動きも考える



4 体重減らそう:「体重減らそう」というオスティナートを作る、このテーマで歌詞をつくる、架空の文字の「体重減らそう」を考え、それを反復する模様を描く、その模様の上にこのテーマで絵を描く、この絵を楽譜として解読してメロディーをつくる



5 メッセージ:ダイエットの運動をせよという内容のお告げの文章を考える、それを声明や聖歌のような歌い回しを考えて、声明やネウマ譜のような楽譜に書く



6 ニュー民謡:あいのて、囃子ことばを考えリズムを決める、楽器と色の対応を決める、楽譜としての絵を描く




ってな具合。6つのグループが全然違うことをしているので、こっちで絵を描いているのに、あっちでは俳句を作っていて、こっちではメロディーを考えている、ってな状況になって、他のグループが何をやっているのかも、気になりながら、自分のグループに集中せずに、あっちのグループにも顔を出したりするのが、面白い。


ちなみに、ヒューの意見では、暖房のきいた部屋で床に座って作っていた女子と、寒い図工室で椅子を出さずに立ったまま活動していた男子とでは、そもそも環境が全然違うので、単純な男女の比較はできないと思うとのことでした。また、どちらの部屋でも、みんなが活動している中、二人の子どもが、けんかというか、どつき合いをしていたそうで、そこが全く同じだった、とのこと。


放課後は、箏の曲が発展したが、ヒューとやったら、なんと箏の置き方が左右逆。だから、何とも不思議な弾き方になって、これは、生田流でも山田流でもなく、かなり独自な平盛流の箏曲が生まれた。パーカッションのアンサンブルも楽しい。箏柱でドミノ倒しを楽しむ男の子、絵を描く女の子、など。

こういう集団の場というのは、メニューが一つに限定されていると、そこに適応できないと居場所がなくなりやすい。個性を貫いて集団から弾き出されるか、個性を殺して波長を合わせて折り合いをつけるか。でも、色んなことが同時発生してたりすると、一つに統制がとれない分、どこかに居場所を見つけやすい。


でも、こうした同時発生の場は、下手すると無目的の混沌の場になり、全員が不幸になる。だったら、大多数の人が幸福であることを優先すると、多数派の人に照準を合わせて、全体を一色のカラーに統一していった方が、妥当な選択だ、ということになる。でも、全ての人が居場所を見つけられる場が存在するならば、それは、不幸で無目的な混沌ではなく、幸福な場であって、そこに可能性があるはずだ、と思う。そこにある美について考えるために、ぼくは、小学校にわざわざ足を運んで、いろんな困難と喜びとに出会っているのだと思う。