野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

80歳の歌姫

国立博物館で、いろいろ見て、タイの伝統楽器もいろいろ見て、もっと深く勉強したい気分になる。タイの伝統音楽と一括りにするのは乱暴すぎることを再確認。それから、これまでは、アナンという音楽家を先入観なく見ていきたかったので、タイ音楽についての知識や先入観を排除して彼に接していましたが、この3年間でアナンの個性への理解が深まってきたので、そろそろタイの音楽について、いろいろ勉強してもいいと思うようになりました。

その気持ちに呼応するかのような午後。

まずは、国立劇場の横にある国立舞踊音楽学校。ここで、伝統楽器の授業を訪ねました。ちょいと鍵ハモの演奏も。

続いて、バンコクから河を渡ったトンブリー地区にある古い学校を訪ねました。それは、狭い路地を入っていった民家の中にある普通の家のようなところで、ひっそりとしていました。数百年前から、ここで住み込みで修行して音楽家が育成されていましたが、今は国立学校に学生は行き、ここには、弟子はほとんどいません。内弟子になっていた時代から芸大で学ぶ時代に以降しているのですが、ここには博物館にある楽器よりも、断然すごい楽器が保管されていました。この楽器はここにあるべきだ、と博物館に入れずに、この場で守られているのだそうです。

この学校の昔の先生たちの作曲した曲を聞かせてもらいました。アナンがいろいろタイ語に訳してくれるので、感想を伝えると、先生は、言葉よりも音楽で語る方がいい、と言いました。だから、ぼくはその楽器を即興で演奏させてもらいました。やぶちゃんも演奏した。叩いても簡単には良い響きがしない。普段叩いていないから、すぐには発音が悪いのか。でも、楽器を触っていると、古い記憶を呼び起こすように、豊かな音が出てくる。自分の音楽性でタイの楽器に対峙する。

その後、さらに、もう一個行こうと、アナンは、別の教室に。街中に普通にお琴教室があるように、別の教室も街中の路地の中にあった。看板も何もない。そこには、60歳くらいに見えるけれど実は80歳の歌姫がいた。若い頃は本当に有名で活躍していたタイの伝統音楽の歌手。そこで、ご飯をご馳走になり、アナンの突然のタイの太鼓のリズムのレクチャーもあり。そして、最後に、即興演奏を聴かせることになった。

80歳の歌姫に聴いてもらう音楽は、素直に気持ちを入れて演奏することができた。ということで、いよいよ明日から、カンボジア