野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ホエールトーン・オペラ全幕上演

本日、ついに全幕上演しました。予想された観客数よりも圧倒的にたくさんのお客さんが来てくれました。数日前の前売り状況から数十人かもと想定されたのに、190人のお客さんが来てくれました。

梅津さんは昨日、長野県の豊科で本番があって、昨夜に東京に戻り、今日、こちらまで来てくれて、でも、11:00から始まったゲネプロの最後の最後に、到着。ゲネプロもやらずに本番いきなりです。それでも、梅津さんには参加してもらえて、本当に良かったです。音楽が引き締まった。

本番前にワークショップ参加者の人たちと、リハーサル以外にみんなの緊張をほぐすような何かをしたいな、とヒューと話していたのですが、ゲネプロをやって段取りを確認するので時間切れ。でも、本番前に、みんなに不安なこと、確認したいこと、を尋ねたら、次々に手を挙げて質問してくれて、なんだか嬉しかったです。

本番は、かなりうまくいったと思います。14歳のコーダイのハーモニカ演奏から76歳の千葉さんのワンマンバンド初挑戦まで、色々、印象的なシーンがあります。打ち上げで「76年生きてきて、今日が一番いい日でした」と言ってくれました。4幕の最後に剣玉も披露。もう、本当に色んな印象的な場面があったよ〜〜。

有馬さんは白衣の下にピンクのシャツを着て、マッドサイエンティスト風の電気療法を演じ、梅津さんは梅の精役で、クラリネットのソロを思う存分聴かせてくれました。1幕のバンドは、弾いているのですが、聴いているのがすごく楽しかったです。ワークショップ参加メンバーの合唱は、とっても良かったなぁ。コケラコケラの演奏はエネルギーもありました。しょうぎコーラスでは、暗譜で指揮をする自信がなかったのに、譜面台を片付けられてしまって、やや動揺したぼくは、そこでやや慌てて、テンポが速くなって、みんなが少し歌いにくそうでした。振りながら、ゴメンネ、って思いながら、みんなの顔を見てました。でも、最後のガバっ、カバだー、がすごく良かった。指揮者がいまいちでも、演奏者がカバーしてくれて、サンキューです。

菊地さんも、名倉さんも、前回参加した時よりも、パフォーマンスが自信に溢れているというか、楽譜に書かれていない音楽を、どんどんイキイキと演奏していて、2回目で感じがつかめている、というのかなぁ、ますますいい感じでした。3幕の二人の演奏は、本当に素晴らしかったです。またまた、何か一緒にしたいなぁ、と思ってしまいました。

山川さんと有馬さんは、どんどん色んな提案やアイディアを出して、このオペラを面白くしてくれます。収束するのではなく、広がっていく。

今回のメンバーの中で、Peteはエンターテインメント精神が最も強い人かな。彼がいて、それで、その分、こっちは実験的だったり抽象的なものにいきやすい。ある意味、ひとつの軸を作ってくれていました。そして、演奏中ぼくは、彼の顔を見ながら、何度も微笑むことができました。

とにかく、井上信太くんの美術に、みんなが刺激を受けて、どんどんクレイジーになっていく。今回の公演は、彼の作品の力なしには、あり得ませんでした。すごいインスピレーションです。舞台美術というのは、観客のみならず、出演者に以下にインスピレーションを与えるか、だと思いました。観客のためだけではなく、出演者のためでもある。当たり前のことだけど、その場、その空間にいる全ての人に向けられている舞台美術でした。空間を作るとはそういうことで、彼は2次元表現にこだわりながら、空間を作っているのです。

4幕の後半は、かなり即興の要素を残しました。ここで、いろいろ決めすぎると、1幕や2幕の世界に戻ってしまうのです。1幕や2幕の世界は、2004年に作ったもの。ぼくたちは2006年にいるのです。4幕の最後で、同じように整理するのはあり得ない。そして、作品の終わりは、非常に抽象的になっていきました。観客の皆さんには、どんな感情が残ったのでしょう。

今、ホテルで片岡さんと話しながら、「それにしても、みんな素敵だったね〜」と喋ってます。本当に、みんな素敵だった。

打ち上げのことや、色んなことを書きたいですが、今日はここまでにします。
ワークショップメンバーから寄せ書きもらって、嬉しかった。でも、また来ます。