野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

JFC作曲賞

JFC作曲賞の演奏会が、行われました。予算も潤沢にあるわけではない中、審査員が無理を言って、なんとか一作品でも多くの作品を上演したい、という願いを、事務局が受け入れて下さり、実現したコンサートです。楽しようと思えば、4〜5作品で良かったはずなのですが、編成の違う7作品、50人以上の出演者のコンサートを、行うことができました。

しかも、中川俊郎さんは、審査員だけでなく、実行委員長も兼務で、本当に大変だったと思うのですが、イヤな顔を全然せず、本当に音楽を愛し、人を愛している人だなぁ、と感じました。

譜面審査の時点では、この7作品が、ちゃんと上演され、その魅力が観客の方々に伝わるような演奏会が実現できるのか、そのこと自体が危惧されました。審査員の杞憂に終わった危惧は、これまでの審査員が体験してきた苦労から来ているのだと思います。演奏家から演奏拒否されてしまうかもしれない、作品の意図を汲み取ってもらえず曲の魅力が伝わらないかもしれない、パフォーマンス作品もあるし、どこかで怪我や事故が起きる危険性もある、マイクを使って増幅するが、作曲者の思ったような音響システムが時間内にセッティングできないかもしれない、コンピュータを使った作品が本番になって急に機械のトラブルで音が出なくなるかもしれない、スピーカーからの大音量で観客が体調を壊すかもしれない。

ところが、そうしたトラブルが起きずに、7つの作品の魅力がきちんと観客に伝わる形で提示することができました。そのことには、演奏家の方々の力が本当に大きかったと思うのです。今回、審査員として、演奏家の方々、一人一人に本当はお礼を伝えにいきたかったのですが、ゲネプロ終了直後に開場し、終演と同時に審査会が始まるというスケジュールでは、お礼をお伝えすることができませんでした。でも、本当に皆さんのおかげです。この場を借りて、お礼を言いたいです。

それから、スタッフの皆さん。こちらもご挨拶もお礼も何も言えないようなスケジュールでしたが、あれだけの人数の人が出入りして、しかも、時間もタイトな会を、最後まで事故がなく成立したのは、本当に皆さんの頑張りがあったからです。ゲネプロが終わって、そのまま開場で開演。ぼくらも夕食すらとる時間はありませんでしたが、スタッフの方も食事すらとる時間もないほどの過密なお仕事だったと思います。審査員が譜面審査で、7作品ではなく、5作品を選んでいれば、ここまで過密にはならなかったので、ぼくらの責任でもあります。でも、若い人々のチャンスを、少しでも増やしたい思いで、ギリギリの数を選びました。本当に皆さんのおかげです。お礼を言いたいです。ありがとうございます。

そして、観客の皆さん、来て下さり、ありがとうございます。観客席の熱気があって、やはり演奏家との場の相互作用があり、本当にどの作品も素晴らしい演奏になったのだと思います。観客の皆さんが、場のエネルギーを高めるのに、本当に貢献してくれていたと思います。美術家、ダンサーなど、普段、現代音楽のコンサートに足を運んだことがない、という人のお顔も何人も見かけましたし、仙台など、遠方から駆けつけてくれた方もいました。嬉しくって、頭が下がります。

まずは皆さん、お疲れさまでした。素晴らしい演奏会が実現できて、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

審査会については、次の日記で。