野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

椅子の下をくぐる

弦楽四重奏ズーラシア」の中の1曲「フンボルトペンギン」のスコアを書き終えてから、大慌てで荷物をまとめて、淡路島へ行く。今日から、国立淡路青年の家で、エイブルアート・オンステージの第2期の人たちが講師をつとめる2泊3日のワークショップ。ワークショップの参加者が30人なのに、講師が40人近くいて、この70人での不思議な合宿。

で、そのオープニング・ワークショップをぼくがやることになっていた。別に、ぼくの音楽を体験することが目的でもなければ、何か舞台を作るための準備でもなく、この3日間の始まりをうまく始められればいい、そういう役割を、ぼくは担わさせられているのだろう。

じゃあ、どうしよう。集まった人の顔を見ながら、でも、何か既存の演劇の講習会ではありませんよ、というメッセージを送りつつ、それでいて、参加している人たち同士の交流が始まるようなそんなことが、ぼくの役割。これは、結構、難しい。

まずは、自分が演奏してみた。鍵盤ハーモニカを吹いているうちに、椅子に座っている人たちの椅子の下をくぐりたくなった。椅子の下をくぐりながら演奏。椅子を椅子の下からコツンコツンと叩いたり、椅子に鍵盤ハーモニカを演奏してもらったり、参加者の体に鍵盤ハーモニカを演奏してもらったり。ひとまず、ぼくだけ、メチャクチャな人でしたが、少しその場の空気がむちゃくちゃになりました。

その後、椅子を並び替えて、みんなで椅子の下をくぐってみようとやってみた。椅子の下をくぐっても椅子の上に人が座っていてくれないとつまんない。人と人との距離感が面白いんだ。椅子の並びもぐちゃぐちゃになって、椅子の上に座る人、困っている人、椅子の下をくぐる人、色んな人が色んな態度でその場にいることがはっきりしてきた。色んなスタンスの人がいる。

どうしようか困ったなぁ、とぼくは言いつつ、ピアノをずっと弾き続けた。そうしたら、皆さん何とかしてくれるかなぁ、と委ねてしまったら、だんだん、その中でみんなが居場所を探しながら、車椅子でもくぐれるような椅子のゲートを作る人が出てきて、また、椅子を組み立てて、ピラミッドを作り、安全面に気をつけながらも、天井に手が触れる高さまで、椅子を数段組み立てたり。すごかった。

1時間の予定のワークショップ。これで35分くらい。もう十分だし終わろうか、と思ったけど。その後、亀と竜が出てくる即興芝居をやってみたり、イギリスから来たジョン・パルマーが黒板に「hello from the UK」と書いたのを吉野さつきさんが和訳したのをきっかけに、翻訳ゲームが生まれた。別の高校生の参加者が黒板に絵を描いて、それを別の高校生が翻訳、ぼくが踊ってみて、また別の人がその意味を翻訳。最後は青年の家のスタッフが踊って、それを別の青年の家のスタッフが「みなさん、これから3日間何が起こるか楽しみです」みたいなことを言って、ワークショップは終了。

他にも書きたいことがいっぱいあった、淡路島での一日目でした。