野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

音の番組、三絃

NHKで音の番組の打ち合わせ。前回の3人に加えて、アニメーション作家の人と、演出家の人が加わって、6人で。前回と違って、お菓子をつまみながらのミーティング。お菓子があると、話が進みやすい。以前、京都女子大の先生をしていたときも、よく授業にお菓子を持っていったり、学生にお菓子を持ってきてもらったりして、みんなでお茶を飲んだりした。ちなみに、今日は細長い部屋ではなく、すごい広い部屋の隅に椅子と机を並べて。その部屋の反対の端にアップライトピアノがあった。打ち合わせの資料は、前回も今回もゴシック体で書いてあった。文字はゴシック、話は雑談風。
で、今日の打ち合わせを進めるうちに、どう転んでもぼくと片岡さんが出ないと番組はできそうにない気分になってきた。当初は、ぼくはコンセプトを出す役割かな、と思っていたが、とにかくこの番組では音の良さや、音楽の本質、日常のありとあらゆるものに音楽があり、いつでもどこでも音楽ができてしまう時めきを伝えようと思うと、音の実演をするのは、ぼくや片岡さんが最適だろう。あと、どこかで池田邦太郎さんにも関わってもらえるといいだろうなぁ。話しているうちに、どんどんぼくの担う役割が増えていきそう。忙し過ぎるのは嫌だけど、幼児のための音楽番組を思う存分やろうと思うと、とことん関わるべきだし、だんだん全部やりたくなってきてしまう(出演もアレンジも作曲も色んな音のアイディアも)。自分なりに優先順位とスケジュールを整理して、何を自分がやって何を人にやってもらうかを、そろそろ考え始めないといけないかも。
でも、約3時間の打ち合わせは、非常に面白かった。このままのノリで番組ができれば、かなり面白く画期的な番組になるだろう。ぼくの役割としては、とにかく提供する音楽・音のクオリティを圧倒的に高くすること(音を聴いただけで笑ったりできるような)を心がけることだろう。
それから、三味線の高田和子さんのコンサートに行った。3人のゲスト、藤原道山(尺八)、市川慎(箏)、遠藤千晶(箏)。4人の出演者のうち遠藤さん以外はぼくの曲を演奏したことがある人だ。そう思うと、ぼくも随分和楽器のために曲を書いてきたものだなぁ。とにかく、みんな上手いし、音がしっかりしている。しっかり音を出す、ということを知っている。一音入魂。
市川慎さんの新作「瞬」について、高田さんが「ロックなところを感じた」と語る。今度、市川さん、菊地さん+尺八の人の東欧ツアーのために新曲を委嘱されているが、思いっきりポップな小品を何曲も書こうかな、と思っていた。箏弾きが書くロックな曲は、演奏家らし快曲だった。ぼくは作曲家らしい快曲を書こうと思う。
でも、この日に一番面白かったのは、一柳慧の「密度」。この曲が唯一出演者全員が出る曲で、多分この曲がやりたくて、このコンサートを企画したのだと思う。20年以上前に書かれた時代遅れな感じもする作品を、現代の若者が当時の現代音楽の雰囲気を全く知らずに演奏しているのが、クールでノリがよく、作品がバカバカしく聞こえて、本当におかしかった。多分、当時は作曲者も演奏者もシリアスな作品と思っていたに違いないが、なんだかパロディーだか冗談のように聞こえるくらい演奏が良かった。この体験ができて来た甲斐があった。この作品を若い世代に橋渡しした高田さん、素晴らしい。
演奏会が終わり、片岡さんの家を訪れる。片岡さんにもNHKの番組に出るように納得してもらい、一緒に番組イメージについても語り合った。そのまま温泉に行って、朝まで飲んだ。いろいろ大分での面白かった話などを聞いた。