野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ウクレレと瓢箪と鍵ハモ

いよいよ高松を出発。寺内くん、岡部夫妻ともお別れ。
それにしても、昨日は、路上もあり、曲の演奏もあり、即興もあり、投げ銭ライブもあり。まるで、岡部さんにスパルタ特訓を企画されたかのごとく、メチャクチャハードなスケジュールだったが、途中で楽しいうどんツアーが盛り込まれていて、ハードというより、楽しみながら、明らかに鍛え上げてもらったような気分。この一日で、P-ブロッの演奏が一回り成長したような気がする。岡部邸を後にするのは、すごく名残惜しかった。
みんなで最後のうどん、朝から「うどんの田」で天才うどん職人のうどんを食べて、お別れ。また四国に演奏に来たいです。
さてさて、それから、淡路島を突っ走り、大阪府立現代美術センターに午後1時すぎに到着。そして、2時から伊達伸明さんとの対談。伊達さんとは今日が初対面。京都にあるアートスペース虹の熊谷さんの紹介で対談することになった。80年代後半から90年代前半、ぼくが学生だった頃、毎週のようにアートスペース虹に行って、現代美術の展示を見ては、熊谷さんにお茶を出してもらって、ダラダラとおしゃべりをした。現代アートのこととか、世間話とか、ぼくが考えていることなど、いつも話していて、そこで、色んな人も紹介してもらった。当時、美術家の中原浩大さんのことを、最近忙しくなって、あまり顔を見なくなったなぁ、と熊谷さんがもらしていたように思う。中原浩大さんも虹で展覧会などをしていたが、もうその当時はベネチアビエンナーレなど、海外で活躍していてスケジュールが埋まっているようだった。その話を聞いて、浩大さんも虹に顔を出せばいいのに、と思っていたぼくを思い出した。というのも、熊谷さんに「野村さんもお忙しそうでわざわざ・・・」などと言われて、なんだか、ぼくが当時の浩大さんみたいだなぁ、と思って、反省。
とにかく、熊谷さんのお薦めの伊達さんとの対談。最初、ぼくのプレゼン、次に伊達さんのプレゼンと進む予定だったが、始まってすぐに、伊達さんの声を聞いたら、段取り通りやりたくなくなった。それで、最初に伊達さんウクレレ、ぼく鍵ハモで即興演奏をした。これが、なんとも、人見知りの極致の小さな音のセッションだった。いい時間だった。

その後、伊達さんとの対談で、大雑把に話しているうちは話が動かなかったけど、過去の作品で、どうしてこのギターは8弦なんですか?というような具体的かつ細部に関する質問をしたときに、話が動き出した。宇宙の話で、伊達さんもぼくも天文少年だったという意外な共通点があったこと。星空は単なる星なのに、一度星座を覚えてしまったら、星空は星座にしか見えなくなってしまうこと、なんかが、いつの間にか他の話題ともリンクしていった。伊達さんは、本当に細かいところにこだわって仕事をしているし、ベニアの板の2ミリだか1ミリだかの違いや何かとか、コンセプトとかとは全く関係ない職人的な作業上のこだわりの話が本当に面白かった。
対談の最後に、P-ブロッのメンバーに加わってもらい、伊達さんのウクレレで合奏をしてみた。実際、こうやって音を出してみると、このウクレレたちの形状が、音楽に大きく影響してくるのが面白かった。
終演後、北浜のworkroomへ移動。夜は、瓢箪楽器演奏家の奥田扇久さんとのコンサート。プログラムは、前半を「即興、P-ブロッ、即興」の3部構成、後半をそれをひっくり返して「P-ブロッ、即興、P-ブロッ」の3部構成にした。

1 奥田扇久+しばてつ 即興
2 音楽会のお客
3 牝鹿〜ローランサンの森で鹿がカヒョー
4 FとI
5 奥田扇久+林加奈鈴木潤野村誠 即興
休憩
6 セカンドステート
7 生き生きとした白
8 犬が行く
9 短い即興(1分30秒、1分30秒、40秒、2分、15秒)
10 ビネール
11 この道

今回は即興コーナーでたっぷり、奥田さんとのセッションの時間がとれたのが大きい。奥田さんのセンスの良い即興、時に独特のボケ方があったりして、イカレレというイカの形をしたウクレレを音をさせずに泳がせたり、カエルの形をした置物で、静かに単純な4拍を絶妙な間合いと呼吸で刻んでみたりして、たくさん笑いをとっていた。
徳島で初演した絵の曲を4曲とも演奏した。徳島の時は絵が主役で自分たちがバックバンドのような立場で、どうやって観客に対して音を届けるかが、難しかったが、今回は絵が主役ではなく曲が主役なので、他の曲と同じ意識で落ち着いて演奏できた。絵を見ないで演奏を聴いたお客さんは、頭の中で全く違った絵を想像したのだろうか?
休憩中に、「はじめにきよし」というバンドのはじめさん(ギター&のこぎり)が楽屋を訪ねて来た。終演後にお客さんの中で「はじめにきよし」のファンでP-ブロッは知らずに聴きに来た人からも、「はじめにきよし」と対バンでライブをするように薦められた。「はじめにきよし」は、もうひとりのきよしさんが鍵ハモを吹くインストのバンド。是非、どこかで一緒にライブをしたいなぁ。
それから、お客さんの中でフレームハウスというところのトイレでチラシを見て、見に来たという人がいた。その人たちは、そこで行われている鍵ハモ教室で習っているらしい。松田昌さんかと思って尋ねてみたら、違う人(ジャズピアノの人)だった。鍵ハモはどんどん広がっているみたい。
後半に制限時間つきの即興をやった。やってみると、意外に1分30秒が長いことに気がつく。40秒というのをやった後に2分をやったら、すごく長く感じた。最後に15秒の即興をして、15秒たったところでお客さんに拍手をしてもらう、という企画もやった。
即興と鍵ハモを思う存分楽しんだ。
workroomは、P-ブロッにちょうどいいサイズで、とっても気に入ったので、ここでまた演奏したい。
ちなみに、P-ブロッのCDとぼくのCD「せみ」は、workroomでも発売中です。