野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジョグジャ鍵ハモセッション2回目〜即興から共同作曲へ

 ジョグジャの鍵ハモ奏者/作曲家のギギー君が、鍵ハモを携えて、我が家を訪ねてくる。ギギー君は、才能溢れる芸大生で、オーケストラ曲の作曲/指揮をしたり、インドネシア語やジャワ語や色んな言葉で喋る声のアンサンブル曲を作曲したり、ピアソラのタンゴを鍵盤ハーモニカで演奏したり、また、シンセサイザーで奇妙なフリー・インプロヴィゼーションをしたりしている。
 「鍵ハモ5重奏の録音、全部、聞いた」
とギギー君。ぼくが日本でやっている鍵ハモのグループ「P−ブロッ」の録音を渡したのだ。
 「鍵ハモをアンサンブルでやると、ピッチのずれが出るから、微分音のずれが独特だね。」
とギギー君。なかなか、鋭いところを着いてくる。
 「うん。実際、鍵ハモはピッチが安定しないからこそ、アンサンブルで、予測不能な微妙なハーモニーが生まれて、そこが面白い。」
 「そういう点で、弦楽四重奏とかとは、全然違うアンサンブルになるね。」
 「その意味では、ガムランに近いかも。」
 「あと、あのベートーヴェンソナタ、面白かった。」
 「あれは、P−ブロッのメンバーのしばてつさんの編曲。あの人は、非常に独特なセンスで編曲するよ。」
ジョグジャ初の鍵ハモ奏者、ギギー君は日本の鍵ハモシーンを、次々に吸収中だ。
 「前回の即興すごく良かった。録音、聞いてみる?」
ぼくらは、録音を聞いてみた。
 「今の録音の感じで、演奏してみようか」
と提案し、鍵ハモ即興をする。前回の印象を保ちながら、濃縮された感じ。
 「こうやってやると、前よりも良くなる」
とギギー君。
 「この即興のストラクチャーを書き出してみよう」
ということで、ストラクチャーを書き出して、それに基づいて即興をしてみた。さらに、濃縮された感じ。
 「もっと、良くなった」
 「こんな感じで曲になっていくね。」
前回は、単なる即興だったが、共同作曲へと発展していけそうだ。
 「これって、二人だけでやるのかな?」
とギギー君。
 「他の人も加えられるけど、例えば誰を?」
 「ダンサーとかが入ってもいいかも、と思って」
彼の人脈で膨らんでいっても面白い。
 続いて、美術家の宮田篤君の微分帖を紹介し、ギギー君と微分帖作曲でメロディーを作った。インドネシア人は楽譜を書く時に、迷わず数字譜を書く。良いメロディーができた。
 「じゃあ、このメロディーを使って、即興をしてみようか」
と提案。メロディーを素材にした即興は、ストラクチャーが決まっている即興とは違ったテイストになる。
 「次回は、東ジャワのバニワンギの音楽を題材にしたセッションもしてみたい。」
 「じゃあ、何か日本の民謡を素材にしたのもやってみてもいいし。」
ということで、ギギー君とのセッション2回目は、即興から共同作曲へ向かった。第3回は、4日後になった。ジョグジャ滞在の半年間に、何度もセッションを重ねられそうだ。