野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「演奏する」の定義

Leeds Liederのプロジェクトで、2つの小学校に行く。ザウルス、カナ、ヒューと3人で。一つ目の学校は、10歳の子どもたち。二つの歌が既に完成していて、リハーサル。実は、このフェスティバルがプロのピアノの伴奏者を雇うつもりだったが、それだと全部譜面を書かなければいけないので、ヒューの提案でぼくが伴奏することになった。伴奏者の仕事をするなんて、ずっとやったことがないだけに、新鮮。子どもたちの作った歌に、どうやって伴奏パートを作っていくか、が楽しい。
二つの歌の一つは女王に関する歌で、もう一つは「学習」に関する歌だった。この学習に関する歌が面白かった。歌詞は、
練習すれば完璧だ、自信が出る、最初はダメでも、何度も何度もやれば、最後にはOK、などなど。
どうやってこの歌を作ったのだろう?ヒューによると、全ての子どもに「最近学んだこと(例えば水泳とか)」、「大昔に学んだこと(例えば自転車の乗り方とか)」、「未来に学びたいこと(例えば、飛行機の操縦とか)」を書き出してもらい、それはどうやったら学べるのかを書いてもらった、とのこと。それを組み合わせて歌を作ったらしい。
それから、カナ、ザウルス、野村による時間。かなりハチャメチャな即興に子どもたちも巻き込んでの時間。全部終わった後に、ヒューがコメント。最初の日に言ったように、音楽を演奏することは「次に何が起こるか分からない」し、「思いっきり楽しんだ」ってことだよね。この3人はそれをやってたよね、と言う。
実は、ヒューは音楽を演奏する、の定義を子ども達と考えたらしい。演奏するはプレイ(=遊び)。プレイってどういう意味かな、と相談した結果、「結果が分からない」、「思いっきり楽しむ」と子どもたちが提案した、とのこと。ヒュー曰く、子どもが考えた定義を、今後ぼくが使わせてもらおうと思っている。
午後、別の学校に。こちらは、8歳。3つの歌があった。「UFF」という歌は、UFOをもじったもので、未確認(unidentified)、キツネ(fox)、カエル(frog)の略。ぼくの伴奏の感想に、子どもたちが喜び、それで拍車がかかって、UFOはグリッサンド、キツネは手を交差演奏、カエルは右手がカエルみたいにジャンプして、時々ピアノのボデイの上も叩くことになった。金魚についての歌は、心臓病で死んだお姉さんの話で悲しい歌。「キュウリの部屋」は、community roomをcucumber roomと言い間違えたことが起点になってできたノリのいい歌。
またまた、カナ、ザウルス、野村のパフォーマンスを楽しむ時間も作った。かなりバカ受けした。ザウルス、どんどん才能が開花。
二つの学校の後は、ヒューの3人の子どもとCastle Hillに行って遊んだ。すごいいい景色。昨年、池田邦太郎さんと来て、池田さんが大感激した場所。ラグビーボールで大遊び。
夜は、ハダスフィールド大学のシアターで、演劇学科の学生(約80人)対象の即興演劇公演の前に、15分だけヒュー、カナ、ザウルス、ぼくで即興をした。これまた、かなり狂った即興で、ザウルスは観客に頭をなでてもらうし、観客にも抱きつくし、しかも、誰もプロっぽくないので、本当に本当に即興で、次に何が起こるか、本当に分からない即興だった。
何か新しいことが始まりかけている予感。新鮮な一日だった。全て、今までの自分のやらないことだった。脱皮の時期だなぁ。